研究概要 |
地球温暖化に繋がる温室効果ガス排出量削減を達成するために,地球上に豊富に存在し,地球環境に優しい海水を有機溶媒の代わりに反応溶媒として使用でき,かつ有機合成化学において特に重要な不斉アルドール反応やマイケル付加反応を促進する高機能有機触媒を開発する。さらに,開発した有機触媒をフルオラス修飾することにより,回収リサイクル使用を可能とする環境に優しい不斉触媒反応を開発する。また,本不斉反応によって得られた光学活性体を鍵中間体として,種々の生理活性化合物の合成に応用し,医薬品開発を目指す。 研究代表者(三浦)は平成23年3月までに,独自に開発した有機分子触媒の合成法(T. Miura et al. Tetrahedron Lett., 2009, 50, 2632. )を基に,フルオラス化した有機触媒を調製し,回収再利用可能な水中での不斉アルドール反応を報告した(Org. Lett., 2010, 12, 1620. )。さらに,その有機触媒の類縁体を用いた水中での両エナンチオ選択的アルドール反応も報告した(Synlett, 2011, 410. )。また,フルオラス化したIBX触媒を調製し,回収再利用可能なIBX酸化反応を開発した(Chem. Commun., 2011, 47, 1875. )。今後,海水中で最も効果的な有機触媒の開発を検討するとともに,アルドール反応以外の不斉反応への適用拡大を目指す。実施予定の不斉反応として,マレイミド化合物とカルボニル化合物との不斉マイケル付加反応や,水中での不斉マンニッヒ反応を始めとした有用な不斉触媒反応への応用を検討する。さらに,新たなフルオラス有機触媒を調製し,種々の不斉反応への応用を検討する。
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