本年度は、各種の植物から配糖体の酵素合成に使用可能な糖転移酵素cDNAをできるだけ多数単離し、その機能を組換え酵素を用いて解析することを目的として研究を実施した。主要な成果は以下のとおりである。 (1) クチナシ、スイカズラ、ニチニチソウ、ハマボウフウの植物体(主として葉)および培養細胞からcDNAライブラリーを構築した。これらのライブラリーを鋳型として、糖転移酵素遺伝子に保存された配列をもとにホモロジークローニングを行い、糖転移酵素遺伝子候補cDNAの多数の断片を得た。 (2) ニチニチソウのESTデータベースを検索し、糖転移酵素に相同性を示す8つのEST配列を発見し、これらがニチニチソウの葉で発現していることを確認した。 (3) これらの断片について分子系統学的な解析を行い、糖転移酵素のグループAおよびLに属するものを選び出し、RACE方により全長cDNAクローンの単離を試みた。現在までにクチナシから2つ、スイカズラから1つ、ニチニチソウから2つ、ハマボウフウから3つの全長cDNAクローンを得た。 (4) これらのクローンについて、大腸菌発現用ベクターにサブクローニングし、組換えタンパク質を得られることを確認した。また、一部については、種々の基質を用いてその機能を検索した。 これらの研究成果は、平成23年度において、これまでに得た各種酵素を用いて種々の配糖体の効率的な新規合成法を開発して行くための基礎となるものである。
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