研究課題/領域番号 |
22590011
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
長光 亨 北里大学, 薬学部, 教授 (90300756)
|
キーワード | pyripyropene A / 全合成 / ACAT2 / 新規抗高脂血症薬 / 創薬研究 |
研究概要 |
近年高脂血症治療薬の新たな標的の一つとしてACAT2が注目されており、北里研究所で発見されていたpyripyropene A(1)が近年再評価された結果、そのACAT2を高選択的に阻害する唯一の化合物であることが明らかとなった。申請者は1をリード化合物とした新規抗高脂血症薬の創製研究を既に進めており、現在までにin vitroの段階ではあるが1を凌駕する高選択的でかつ強力なACAT2阻害剤の開発に成功し、近々動物実験を開始する予定となっている。そこで申請者は、今後の創薬研究を進める上で様々な理由から必要とされる1より直接導くことのできない種々の新規誘導体の合成に対応可能な応用性の高い全合成経路の確立を目指し、研究に着手した。その結果、安価な(R)-carvoneを出発原料として、段階的なジアルキル化、エポキシ化、Ti(III)を用いたラジカル環化反応を経て、立体選択的にA環を形成した後、ケトンの立体選択的還元、α,β-不飽和ケトンにおけるハロヒドリンの形成、エポキシ化、Peterson反応、それに続く酸処理によるエポキシ環の開裂反応を行いα,β-不飽和アルデヒドの構築を経て、B環上の種々の官能基を構築した。続いて上記アルデヒドに対するアセト酢酸誘導体由来のGrignard試薬との付加反応、酸化、加溶媒分解、分子内環化反応を経てC環を形成し、既知の重要中間体の合成に成功した。最後に当研究室で確立されていた合成法に従い、1の全合成を達成した。この合成法は以前に当研究室で確立されていた合成法よりも高効率的であり、現在本全合成経路を応用して、天然の1からは導くことの出来ない構造を簡素化した新規誘導体の合成を進めているところであり、今後は研究協力者と関係を密にして、更なる創薬研究を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の計画どおり、2年以内でのpyripyropene Aの全合成経路の確立に成功し、さらにその合成経路を応用して、最終目的である天然のpyripyropene Aから導くことの出来ない構造を簡素化した新規誘導体の合成研究に着手することができているため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も確立した全合成経路を応用して、天然のpyripyropene Aから導くことの出来ない構造を簡素化した新規誘導体の合成を順次進めていき、研究協力者によりACAT2阻害活性を調べていただく。また研究協力者により進められている代謝実験で得られて来ている代謝物同定のため種々の新規誘導体の合成も併せて進めていく。全ての結果を共有、反映してより優れた動脈硬化予防治療薬の開発を目指していく。
|