研究課題/領域番号 |
22590013
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内田 龍児 北里大学, 薬学部, 講師 (60280632)
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キーワード | 抗生物質 / 感染症 / カンジダ / 微生物資源 / カイコ |
研究概要 |
真菌症対策の環として、カイコを宿主としたカンジダ感染モデル(臨床分離カンジダ・アルビカンスTIMM1768株を感染)を用い、天然資源より抗真菌剤のリードと成り得る新規化合物の発見を目的に探索研究を継続して行った。昨年度に引き続き、まずペーパーディスク法で抗カンジダ活性を示した真菌および放線菌などの微生物の培養液を選択し、これをカイコカンジダ感染モデル(カイコ評価系)で評価を行い、治療効果(延命効果)が認められる培養液を精製候補株とした。北里生命科学研究所、秋田県立大学、富山県立大学およびOPバイオファクトリー社より提供された微生物の培養液を評価した結果、4サンプル(真菌:3サンプル、放線菌:1サンプル)に延命効果が確認された。これらのうち、これまでの研究成果においてカイコ評価系で延命効果を示すことを明らかにした化合物(ポリエン系抗真菌剤、キャンディン系抗真菌剤およびトリコテセン化合物)および再培養で活性を示さなかったものを除く真菌の選択株3サンプル(OPTF-0177株、BIYAKU-94株およびBF-0041株)について検討を行った。 真菌OPTF-00177株からはtyrocherinおよびその類縁化合物(計3成分)を単離し、そのうち、tyrocherinはカイコ評価系において、1.5~150μg/larvaの濃度で延命効果を示した。真菌BIYAKU-94株からはペプチド系化合物SCH643432を単離し、カイコ評価系において15μg/larvaの濃度では延命効果を示したが、それ以上の高濃度では毒性を示した。真菌BF-0041株は継続して検討を行っている。 また、優先順位の低かった過去の選択株を再評価して活性を示した3株についても検討を行っている。そのうち真菌FKI-5190株からジテルペン化合物を単離し、高濃度ではあるが50μg/larvaの濃度で延命効果を示すことを明らかにした。 今後は、現在検討中の3株(FKI-5302株、K10-0569株およびBF-0041株)から新規抗真菌化合物の取得に重点を置き、継続して探索研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規化合物の取得には至っていないが、これまでにin vivo評価での抗真菌活性の報告のない化合物が本評価系で選択されていることから、より生体内で効果を示す可能性のある化合物の早期に選択できていることが考えられる。また、得られた化合物は、毒性等の詳細を検討する必要性はあるが、マウス等の哺乳類を用いた動物実験においても効果を示すことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度となるため、これまでのスクリーニングにおいて選択された真菌2株(FKI-5302株およびBF-0041株)および放線菌1株(K10-0569株)の培養液より、抗真菌物質の単離精製に重点をおき研究を継続する。 すでに真菌FKI-5302株からは新規化合物の生産が示唆される結果を得ているが、生産量の低さが問題となっている。これに対しては、生産能の高い菌株の取得を並行して行っており、化合物の取得を目指している。残りの2株については、同様に活性物質の単離を行い、新規性、活性および毒性等の詳細を調べ、可能であれば哺乳動物を用いた動物実験へと進めたいと考えている。
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