真菌症対策の一手段として、カイコにカンジダ (Candida albicans TIMM1768) を感染させた感染モデル (以下、カイコ評価系とする) を利用し、真菌および放線菌などの微生物の培養液を中心とした天然資源より抗真菌剤の新規リード化合物の探索研究を継続した。まずペーパーディスク法で抗カンジダ活性を示す培養液を選択し、これをカイコ評価系に供し治療効果 (延命効果) を示すものを候補株として選択した。独自の微生物培養液約 600 サンプルを評価した結果、本年度新たに真菌の培養液 1 サンプル (真菌 BF-0003 株) を選択し、昨年度からの検討継続株 (放線菌 K10-0569 株、真菌 FKI-5302 株および真菌 BF-0041 株)と共に活性成分の単離精製を行った。 まず、真菌 BF-0003 株からは新規物質 BF-0003C 物質の発見に成功し、本物質はペーパーディスク法において抗細菌活性を示すことなく抗カンジダ活性を示した。またカイコ評価系においては、25 ~ 100 μg/幼虫の濃度で延命効果を示し、この範囲では毒性を示さなかった。今後、本物質については詳細な抗真菌スペクトルの測定および作用点の解明を進める予定である。 次に放線菌 K10-0569 株および真菌 FKI-5302 株からはそれぞれ 1 成分を単離し、現在構造解析を進めている。また、真菌 BF-0041 株からも活性物質 1 成分 (BF-0041 物質) を単離し構造解析を行っているが、本菌株は BF-0041 物質の抗カンジダ活性を増強する物質も同時に生産していることを明らかにした。現在、この活性増強物質の単離を進めており、併用による治療効果に興味が持たれる。
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