研究概要 |
今年度は,非アミド型炭素-窒素軸不斉化合物としてアトロプ異性N-(2-tert-butylphenyl)indoleを考案し,その触媒的不斉合成と絶対配置の決定を目的に検討を行なった. すなわち,アキラルなN-(2-tert-butylphenyl)-2-alkynylanilineの5-エンドヒドロアミノ環化反応を(R)-SEGPHOS-PdCl_2触媒存在下行なったところ,炭素-窒素不斉軸を有するアトロプ異性インドールがエナンチオ選択的に得られることを見いだした.反応のエナンチオ選択性は基質の構造に依存し,例えば,フェニルアルキニル基のベンゼン環上の立体効果ならびに電子密度によって,不斉収率は大きく変化する.反応の不斉収率は最大83%eeであり,必ずしも満足できるものではないが,本反応は非アミド型炭素-窒素軸不斉化合物の最初の触媒的不斉合成例である.また,オルトアルキニルアニリンの5-エンドヒドロアミノ環化反応は,インドール骨格の効率的合成法として多くのグループにより検討されているが,不斉反応への展開はこれまで全く報告されておらず,本反応が最初の例となる.なお,合成した光学活性アトロプ異性インドールは,100℃で24時間加熱してもエナンチオマー過剰率に変化は見られず,その不斉軸は非常に高い回転障壁を有することが判明した.さらに,得られた光学活性アトロブ異性インドールを化学変換し,そのX線結晶解析を行なうことにより,主エナンチオマーの絶対配置を決定した.
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