研究概要 |
平成24年度は,昨年度報告した炭素-窒素不斉軸を有するアトロプ異性インドールの触媒的不斉合成に関して,エナンチオ選択性のさらなる向上を目指して反応条件や不斉配位子を種々検討した.しかしながら,昨年度を上回るエナンチオ選択性(88%ee)は得られなかった. 一方,新たな非アミド型炭素-窒素軸不斉化合物として,アトロプ異性N-(2-tert-butylpnenyl)-4-quinolinone誘導体を考案し,その触媒的不斉合成について検討を行なった.すなわち,2-tert-butylanilineと2-ブロモフェニル-アルキニルケトンのタンデム型アミノ化反応(アニリンのアルキニルケトンへのアザマイケル付加と引き続く分子内芳香族アミノ化)を(R)-MOP-Pd2(dba)3 触媒存在下行なうことにより,最大72%eeでアトロプ異性4-キノリノン誘導体が得られることを見いだした.また,4-キノリノン誘導体の不斉軸の回転障壁が極めて高く,1,4-ジオキサン還流下24時間加熱してもラセミ化は全く生じないことも明らかにしている. さらに,炭素-窒素軸不斉化合物の回転障壁に関して,興味深い知見を得た.すなわち,窒素上に2,5-di-tert-butylphenyl基を有する3,4-ジヒドロ-2-キノリノンと2-キノリノンの不斉軸の回転障壁を比較したところ,後者が前者に比べ10 kcal/mol程度も向上していることが判明した.この大きな回転障壁の差をDFT法を用いて考察したところ,環の配座的剛直性が,不斉軸の回転障壁に大きく寄与していることが示唆された.アトロプ異性2-キノリノン,4-キノリノン,インドール等は配座的に剛直な芳香族化物であるため,高い回転障壁を有すると予想された.
|