研究概要 |
シソ科植物から単離された抗腫瘍性アルカロイドであるヘデラシン A 及び Bの全合成を目指して検討し、既に、1-アザトリシクロ[6.2.1.0]ウンデカン骨格の合成経路を確立している。しかし、全合成の最終段階におけるシクロペンタン環C9位への直接的アミノ基導入については不成功に終わり、さらにオキシムを経由するアミノ化においては、ヘデラシンBの9-epi異性体が得られる結果となった。 当該年度においては、これまでの検討結果を踏まえ、1-アザトリシクロ[6.2.1.0]ウンデカン骨格構築の前段階においてC9位にアミノ基の導入を行った後に、1-アザトリシクロ[6.2.1.0]ウンデカン骨格の構築を経てヘデラシンに至る合成経路について検討した。すなわち、5-アミノ置換オクタヒドロアズレン中間体より導いたケトンよりオキシムに変換した後、接触水素化する2段階のアミノ化反応によりC9位へのアミノ基の導入を行い、C9位エピマー混合物として5,9-ジアミノ置換オクタヒドロアズレンを合成した。ここに得られた両エピマーのうち、初めに、天然型ヘデラシンとはC9位の立体配置が異なる9β-アミノ誘導体を用いてヘデラシン骨格合成の可能性を検討した。その結果、対応する三環性γ-ヒドロキシブテノリドに導いた後、塩酸で処理することにより首尾よく環化反応が進行することを見出だし、9-epi-ヘデラシンAの全合成を達成することができた。さらに、9-epi-ヘデラシンBの全合成も達成した。しかしながら、天然ヘデラシンと同じ相対立体配置の9α-アミノ基を有する5,9-ジアミノ置換オクタヒドロアズレン誘導体より対応する三環性γ-ヒドロキシブテノリドを合成し、さらにヘデラシンへの変換を行うため塩酸による環化反応を試みたが、目的物の生成を確認することはできなかった。
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