最近、スプライシングファクターSF3bを標的とするFR901464とpladienolide類が相次いで発見され、スプライシングの阻害のみならず、イントロン翻訳を含めた詳細な機構の解明に期待が寄せられている。本研究では、FR901464とpladienolide類の相同部分を組み替えたハイブリッド誘導体を調製することで、SF3bを標的分子とする新たなバイオプローブの創製を目指すものである。本年度は、FR901464並びにpladienolide類のハブリッド合成を踏まえて、それぞれの新規合成法の開発を検討した。FR901464の合成においては、C1-6のLeft Half部とC7-15のRight Half部の2つに分けて合成を進めた。C1-6のLeft Half部は、市販のトリ-O-アセチル-D-グルカールを出発原料としてエポキシピランを調製し、さらにエポキシドの合成を達成している。一方、アミド単位を有するピラン環であるC7-15のRight Half部は、D-乳酸エチルがキラル素子となる。乳酸エチルをホモアリルメタリルエーテルに導いた後、RCMに付しピランとし、アリル位の酸化によりラクトンに導いた。Pladienolide 類の合成はpladienolideBを標的とし、12員環マクロライド部分とエポキシドを含む側鎖部分に分けて合成を検討した。マクロライドの前駆体であるE-アルケンとsyn-ジオール単位を有するホルミル-α-ブロモエステルを調製し、Reformatsky反応に付すと、対応する12員環マクロライドが得られた。一方、エポキシドを含む側鎖であるC15-23のラセミ合成は完了したので、現在、キラル合成を進めている。今後、FR901464及びpladienolideBの合成法の確立とハイブリッド誘導体の合成を実施する予定である。
|