研究概要 |
シクロプロパン環やシクロブタン環のような小員環は、高度に歪んだ構造であるため、角度歪みとねじれ歪みともに大きく環歪みをもつ。この歪みを解消するため、小員環は開裂しやすく、多種多様の反応性を有しており、有機合成化学上重要な官能基である。我々は、クマリン誘導体から得られるシクロプロパン誘導体やシクロブタン誘導体の環開裂による歪み解消をドライビングフォースとする興味深い骨格変換反応を見出し,これら反応を天然物の合成へ応用しその有用性を明らかにした。 24、25年度は、1)クマリン-3-カルボン酸エステルのベンゼン環部の芳香族性を排除した2-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-2H-クロメン-3-カルボン酸エステル (1) とジメチルスルホキソニウムメチリド (2) との反応を検討した。その結果、2,2’-ジオキソスピロ[ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-6,1’-シクロヘキサン]-3-カルボン酸エステル (3) を得る興味深い新規骨格変換反応を見出した。この新規反応の最適条件、基質一般性を検討し、様々な2-オキソ-2H-ピラン-3-カルボン酸エステル(4)に適応可能であることを明らかにした。2)さらに5位に芳香族性置換基をもつ2-オキソ-2H-ピラン-3-カルボン酸エステル(5)を用い2と反応させたところ、6-ヒドロキシ-4,6a-ジヒドロ-3aH-シクロペンタ[b]フラン-5-カルボン酸エステル (6) を得る新規骨格変換反応を見出した。また、この反応の基質となる5の一般性の高い合成法を開発した。3)イリド (2) の替わりに重水素化された2を用いることにより、これら反応の反応機構を明らかにした。
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