研究課題/領域番号 |
22590026
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
宮部 豪人 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (10289035)
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研究分担者 |
甲谷 繁 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (00242529)
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キーワード | 薬学 / ラジカル / 有機化学 / 合成化学 / 閉環反応 / 不斉合成 / 触媒・化学プロセス / 光触媒 |
研究概要 |
ラジカル種として、強い求電子性を有するパーフルオロアルキルラジカルを用いて、カスケード型反応の位置選択性を検討した。はじめに、基質として、電子豊富なラジカル受容体と電子不足なラジカル受容体という電子的性質が異なる二つのラジカル受容体を有する幾つかの基質を合成し、二つの競合する反応経路について調べた。その結果、立体障害の少ない基質では、電子的に不利な過程(極性が不一致)を経由する反応が主経路となる一方、電子不足なラジカル受容体側に大きな立体障害を有する基質では、電子的に有利な過程のみで反応が進行することを確認した。さらに、電子豊富なラジカル受容体側に立体障害を有する基質では、優先的に電子的に不利な過程を経由することも分かった。電子的に不利な過程の反応が進行した理由として、ラジカル中間体の安定性と閉環段階での極性効果が寄与したものと考えている。次に、キラルなルイス酸を用いて反応を検討したところ、反応は立体選択的に進行して良好なエナンチオ選択性が得られるとともに、二つの競合する反応経路の選択性の向上も観測された。 次に、歪み化合物ベンザインの高い反応性を利用し、歪みエネルギーを駆動力とした連続反応開発を行う中で、4成分が縮合する連続反応の開発に成功した。そこで、本反応を熱力学的に解析し、歪みエネルギーの解消が本反応の駆動力として働いていることを確認した。さらに、これら反応の中間体を高活性ラジカル受容体として、ラジカル種での捕捉を試みたところ、ラジカル種での捕捉には成功しなかったが、代わりにアニオン種で捕捉できることを見出した。 さらに、固体結晶中に励起電子と正孔が同時に生じる光触媒Tio2を用いたケトン類の還元反応を詳細に検討し、TiO2表面上で起こるアセトフェノン誘導体の光水素化反応の活性点や、基質であるケトン類の反応性の違いに及ぼすケタール形成の影響等を明らかにした。喚
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の計画にあるパーフルオロアルキルラジカルの研究は、順調に進行し、電子的に不利な過程の進行に及ぶす因子をある程度、理解することができた。ベンザインから生成する高活性中間体のラジカル捕捉には至らなかったが、代わりにアニオン種捕捉に成功した。光触媒TiO2の研究では、ケトン類の還元反応の検索までが終了した。
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今後の研究の推進方策 |
パーフルオロアルキルラジカルの研究は、さらなる基質検討を行った後、ラジカルの発生法として、光触媒を用いたC-1結合の開裂法を検討する。光触媒として、これまで研究してきたTiO2のみでなくZnSや、Ruなどの均一系光触媒を用いて検討する。また、昨年度まで継続してきた光触媒を用いたケトンやイミン類の還元反応の研究も継続して展開していく。新たに、緩和な酸化剤である酸化鉄をラジカル開始剤として活用したカスケード反応の開発研究も開始する。基質としては、酸化を受けやすい活性メチレン化合物などを用いて、その可能性を探る。
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