研究概要 |
本研究は固相コンビナトリアル合成によって,触媒候補となるカリックスアレーンライブラリーを効率よく合成し,その中から酵素のように高い反応効率と基質特異性をもち,かつ再利用可能な触媒を効率よく見つけ出す一般的な方法を確立することを目的としている.触媒探索のための合理的なライブラリーを設計するためには,基質結合部位となるカリックスアレーンのupper rimに結合させる4本のアームをいかに修飾するかがポイントとなる.より高い基質特異性と反応性を確保するために,4本のアームを二つのグループに分け,隣同士のアームにはそれぞれ異なるビルディングブロックを導入することとし,昨年度までにupper rimにBoc基で保護した2個のグリシンとAlloc基で保護した2個のグリシンを導入したカリックスアレーン誘導体を合成する経路を確立した.本年度は,固相に担持したこのものに対してモデルペプチドを導入する検討から始めた.しかしながらAlloc基をパラジウム触媒下で除去すると,固相樹脂が黒ずんでしまい各種溶媒で洗浄しても,どうしてもこの黒ずみを除去することができなかった.この原因はパラジウム触媒がカリックスアレーンと錯体を形成しているためと結論づけた.固相樹脂が黒ずんでいると,後の遷移状態アナログを用いた,オンビーズスクリーニング-ポストラベル化法によるカラーアッセイができないため,別な保護基を探索せざるを得なくなった.Alloc基の代わりにNs基を用いると,Boc基を除去した際に,分子内のアミノ基がNs基に付加してしまうことがわかった.その他詳細な検討の結果,Boc基とDde基の組み合わせで異なる配列のアミノ酸を導入できることが明らかとなった.現在この保護基の組み合わせで,コア化合物の大量合成を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度でコア化合物の合成が完了したと考えていたが,その後アミノ酸を導入すべく保護基を脱保護したところ,そのときに使用したパラジウム触媒と錯体を形成することが明かになり,保護基の再検討をせざるを得なくなってしまった.現在この問題は解決したが,上記理由により,コア化合物の大量合成に着手するのが予定より遅れてしまった.
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