研究課題
今年度は予定通りC環(6員環)とD環(5員環)について主として検討した。出発原料となるイソカルボンが市販品でなかったため、市販品のカルボンから文献記載の方法でイソカルボンを誘導した。しかしながら、この誘導は思いのほか時間と改良を要した。とりあえず得られたイソカルボンを還元し、得られたアリルアルコールを手掛かりに転位反応を検討した。Irlandの方法やアセテーテのエノレートを用いる転位などは、まったく意図したものは得られなかった。そこでEschemmoserの方法を応用したところ、転位はスムースに進行し70%で生成物が得られた。そこでアミドに対してヨードラクトン化を試みたところ、容易に進行し5員環ラクトンのヨウ化物が生成した。常法通りラジカル還元によりヨウ素を水素に置き換えた。この段階で側鎖部分をアルデヒドに導いて、A環(5員環)部分とShapiro反応させたが、カップリング反応は起こらず原料回収となった。原因は不明であるが、先に進めることとした。ラクトンを還元してジオールに導き、酸化によりケトアルデヒドを導くことを試みたが、アセタールが生成してそれ以上進行しなかった。そこで、ラクトールとしてからGrignard反応によりイソブチル基を先に導入し、得られたジオールを酸化することにした。しかし、ここでも常に側鎖のアルコールより6員環の2級アルコールが先に酸化され、結果としてアセタールを巻き込みそれ以上反応が進まないという結果になった。そこでJones酸化で強力に酸化してジケトンとし、アルドール反応により所望のヒドリンデノンを得た。現在そのトランスヒドリンダノンへの還元を検討中である。一方A環部分はほぼ文献記載の反応により所望のシクロペンタノン誘導体を合成した。
2: おおむね順調に進展している
計画書に記載の通り今年度はA環(5員環)およびC,D環(6,5員環)について検討した。これらの反応により合成の素材となるそれぞれの部分が得られた。経路は問題なく予定通りであるが、合成に要する化合物の量をいかに供給するかの問題は残った。
来年度も含め、大きな問題は量の確保である。来年度はA環(5員環)とB環(8員環)の核間に水酸基を導入した化合物の閉環反応を検討する。イソカルボンを経由するルートは確実であるが、経路が長く収率の点で不安が残るため、さらに効率の良い経路を検討する。段階数の短い経路も合わせて検討する。閉環前駆体の合成に関して、C,D環の問題を克服することを計画している。8員環への閉環と前構造に関しては以前のX線のデータと詳細なNOESYの検討により可能となっている。
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