幻覚性植物が含有する多様な化学成分に着目し、その化学構造の多様性解明するための基盤的研究を行うために、新規類縁化合物の検索、推定生合成中間体をモチーフとした分子プローブの合成、及び天然有機化合物をリガンドとして興味あるレセプターを直接釣り上げる「レセプターフィッシング」手法の開発を進めた。まず、幻覚性サルビア(Salvia divinorum)が含有する幻覚活性本態であるサルビノリンAに類縁する新規ジテルペン化合物を精査するため、CPC(Centrifugal liquid-liquid Partition Chromatography)及び活性炭カラムにより効率的にサルビノリンAを取り除いた分画から、分取HPLC等を駆使して新規化合物の単離を試みた。また、カート(Khat : Catha edulis)に含有される幻覚性物質であるカチノンについて、その推定されている生合成経路上の中間体およびその芳香環のパラ位にリンカー結合部位を有する誘導体を合成した。さらに、植物体からカチノン生合成関連酵素を効率良く得るために、コンパクトで反応性が高い光親和性ラベル化試薬の合成を進めた。そして、ラベル化されたレセプターを選択的に釣り上げる手法として、スペシフィックライゲーション(選択的結紮)反応を用いた新規な「レセプターフィッシング」手法の開発を行うために、ライゲーション反応基を有した光解離性レセプターフィッシングロッド(レセプターの釣り竿)の合成を進めた。
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