研究課題
平成23年度は、α-グルコシダーゼ阻害薬およびホルモン「インスリン」の分泌を促進するすい臓内物質G蛋白質共役型受容体(GPCR)活性化物質を指標として、キノコ類,冬虫夏草、地衣類および苔類より、糖尿病予防薬の探索研究を行った。西日本各地採集したキノコ類、冬虫夏草、地衣類および苔類は、エーテル、酢酸エチル、メタノールなどを用いて抽出した。得られた抽出エキスは、・-グリコシダーゼ阻害活性およびGPCR活性化作用を指標として、シリカゲルおよびSephadex LH-20カラムクロマトグラフィーにより分画し、さらに高速液体クロマトグラフィーにより、活性物質の単離を行った。a-グルコシダーゼ阻害活性を示した地衣類ハナゴケ、ナガネツメゴケ、ウメノキゴケ、イワタケのメタノール抽出エキスより、強いa-グルコシダーゼ阻害活性を示す新規芳香族化合物を単離した。ニンギョウタケモドキ科キノコ、コウモリタケから単離されるgrifolic acid誘導体にGPR120アゴニストおよびアンタゴニストが見出された。その生理活性メカニズムを解明するために、Universite de Bourgogne大学のNaim A.KHAN授との共同研究を開始した。冬虫夏草の一種であるオオセミタケの子実体および冬虫夏草菌Cordyceps cardinalis NBRC 103832の培養菌糸体より、7種の新規環状ペプチドを単離した。冬虫夏草菌Cordyceps sp.NBRC 106954の培養抽出物より、10員環マクロライドを含む8種の新規化合物を単離した。それら新規化合物の抗糖尿病作用については、現在検討中である。苔類より、糖尿病および肥満症の治療におけるSGLT阻害剤の探索研究を行い、ゼニゴケ、フタバネゼニゴケに含まれるマルカンチン類に強力な阻害活性が見られた。
2: おおむね順調に進展している
キノコ類、冬虫夏草、地衣類および苔類から、α-グルコシダーゼ阻害活性およびG蛋白質共役型受容体(GPCR)活性化作用を示す新規化合物を10種以上単離することに成功した。また冬虫夏草から得られた新規大環状ペプチドはユニークな構造を有することから、今後抗糖尿薬のシーズ化合物として期待される。
2012年度が、本研究課題の最終年になるため、いままで得られた研究成果は、学術論文に投稿する予定である。ニンギョウタケモドキ科キノコ、コウモリタケから単離されるgrifblic acid誘導体のG蛋白質共役型受容体(GPCR)活性化作用については、フランス、Universite de Bourgogne大学のNaim A.KHAN教授との共同研究を強力に進める予定である。生理活性が見られ、研究が行われていないキノコ類、冬虫夏草、地衣類および苔類の抽出エキスについて分離操作を行い、新規生理活性物質の単離を行う予定である。
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Phytochemistry
巻: 72 ページ: 2024-2030
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http://p.bunri-u.ac.jp/~shouyaku/