研究課題/領域番号 |
22590033
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研究機関 | 公益財団法人野口研究所 |
研究代表者 |
菅原 州一 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (70462265)
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研究分担者 |
大隅 賢二 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (90203778)
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キーワード | シアル酸含有糖類 / 卵黄 / シアリルオリゴ糖ペプチド / N-グリカン / ヒトインフルエンザウイルス / トリインフルエンザウイルス |
研究概要 |
研究代表者は、これまでの研究により、鶏卵卵黄中からのシアル酸含有オリゴ糖ペプチド(SGP)の新規抽出および精製法(特願2010-198213,外国出願PCT/JP2010/065165)を明らかにしてきた。今期、本願手法に関して、鶏卵卵黄および脱脂卵黄を用いた大量処理の妥当性検証を行い製薬企業に対して特許を導出した。企業は本件特許を実施し、SGPを試験研究用試薬として2011.4より提供を開始した。今年度、SGPは広く国内外の研究者や企業に供給される体制が整った。 シアリルオリゴ糖ペプチド機能活用としてヒト型インフルエンザ感染診断を目的として、ナノゴールドにSGPを固定化するための検討を行った。SGPはヒト型インフルエンザ感染受容体と同一の糖鎖構造を有する。SGPをナノゴールドに固定化すれば、診断時にウイルスとSGPが結合することでナノゴールドが赤色凝集し、目視により感染を診断できるものと考えた。SGPに対し、ジスルフィド結合を有するα-リポ酸を導入することでナノゴールドと結合させることに成功した(特願2011-093308)。更にSGPをビーズに固定化することでタンパク中のヒト糖鎖結合分子の研究ツールの開発を試みた(特願2011-179649)。 研究分担者は、精製SGPを用いて脱シアル酸の反応条件を検討し、選択的にシアル酸を除去することに成功した。この際アシアロSGPの製造においてもエタノール沈殿が精製工程として有効であることを確認した。次に国際学会参加時において要望の多かったトリ型インフルエンザウイルス受容体の構造であるα2,3型のシアリルオリゴ糖ペプチドの製造検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シアル酸含有オリゴ糖ペプチド(SGP)の新規抽出および精製法(特願2010-198213、外国出願PCT/JP2010/065165)について、研究機関である公益財団法人野口研究所と株式会社伏見製薬所との間で共同研究契約を結び大量製造検討を開始した。本特許は伏見製薬所にライセンスされ、伏見製薬所はSGP製造を事業化し、製造されたSGPは2011.4より試験研究用試薬として提供が開始された。この特許ライセンスおよび製造販売開始の件は、化学工業日報、2011.2.9日版等に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
SGP製造方法の確立により、企業によるSGP供給が可能となった。企業との共同研究および特許の導出により国内外の研究者および企業にSGPが供給されることになった。従来、SGP製造方法が煩雑であったために試薬として極めて高価であった。その結果、インフルエンザウイルス感染阻害および感染治療等に向けての用途研究が十分進行していなかった。今後は大量供給が可能になったSGPを積極的に使い、インフルエンザ研究関連および医薬分野におけるヒト型糖鎖の供給関連において、より広範な用途研究を展開して行きたい。
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