研究概要 |
研究代表者は、これまで鶏卵卵黄中からのシアル酸含有オリゴ糖ペプチド(SGP)の新規抽出および精製法(特願 2010-198213, 外国出願PCT/JP2010/065165)を明らかにしてきた。出願の内1件は昨年特許が成立した(特許第5106497号)。本願を含む関連特許は、鶏卵卵黄および脱脂卵黄を用いた大量精製法に関し製薬企業に対してライセンスした。企業は本件特許を実施し、SGPを試験研究用試薬としての販売を開始している。現在、SGPは広く国内外の研究者や企業に供給されている。 今年度SGPの純度向上を検討し更なる高純度SGP製造に成功した。シアリルオリゴ糖ペプチド機能活用として簡便なヒト型インフルエンザ感染診断キットの作成を目的として、SGPをシリカ不織布に固定化するための検討を行った。不織布は検体の固定化や洗浄が容易であるため医療関係者からの要望が強い。そこで、SGPをシリカ不織布に固定することを前提に、SGPに対しシリカ親和性を有するフッ素原子含有官能基を導入した。一方、SGPはヒト型インフルエンザ感染受容体と同一の糖鎖構造を有することから、SGPを不織布に固定化することでウイルス感染を診断できるものと考えた。SGPに対し、フッ素原子含有官能基を導入し、新規なフッ素化SGPの製造に成功した(特願2012-104708)。更にフッ素化SGPのシリカ不織布への固定化にも成功したことから、感染患者に対する診断ツールの開発を試みた(特願2012-104722)。 研究分担者は、SGPを糖鎖供給源としてとらえ、各種糖鎖原料をSGPから製造するための製造検討を実施した。すなわちSGPから選択的にシアル酸を除去するための酸条件・温度条件・酵素条件等を検討した。更にこれらのSGPおよびアシアロ体等を用い、糖転移酵素Endo-M等を用いる糖転移反応に関する反応条件について検討した。
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