本研究はSGPの新規製造方法の確立とSGPを用いたヒトインフルエンザウイルス感染阻害に関する。SGPの製造は、脱脂卵黄を調製後、水抽出、エタノール沈殿により塩を含むSGPを得、次にODS樹脂にSGPを吸着させ水洗浄により脱塩し、有機溶媒で溶出後、そのまま凍結乾燥工程に進み最終生成物を得るという簡便な操作により実施される。工業的に製造することを前提として製造条件を検討しカラム操作をできるだけ省いた。従来技術ではいずれも最終工程に脱塩操作が入ることになるが、本法ではODS樹脂に吸着させて洗浄しその後溶出することで脱塩工程を省くと同時に純度向上も達成することを特徴とする。本製造方法は中性条件で行うが、SGPと同時にNeuAc-Galの2糖が無い9糖からなる糖鎖ペプチドも検出された。本製造方法においては9糖を分離することが出来た。本技術は2011年1.月に(株)伏見製薬所に特許導出され、その後SGPの工業的製造が開始され既に2011年3.月より市販されている。SGPおよびその誘導体等の関連化合物供給体制は整いつつある状況にある。 SGPはヒトインフルエンザウイルス受容体と同一の糖鎖構造を有することから、本研究は研究材料の大量供給を可能にした。大量供給が可能となったSGPを使い種々のSGP誘導体およびその製造方法にかんする研究を実施し特許出願した。この点において、本研究はウイルス感染阻害に関する知見を得るための生化学的展開に貢献した。本研究はインフルエンザウイルス感染阻止に対する新たな知見を得ると期待された。ヒト型シアル酸含有糖鎖とウイルスヘマグルチニンHAとの相互作用研究のためのツールを十分に確保するという課題に対しても解決策を与えることができた。更に研究ツールの提供により関連研究の加速化が予想され、糖鎖一ウイルス相互作用研究という「学術面」で意義があるだけでなくインフルエンザウイルス感染阻害に関する研究加速という「実践面」にも大きく貢献することが期待される。
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