研究課題/領域番号 |
22590035
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 正子 東北大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (10466534)
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研究分担者 |
竹内 和久 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (40260426)
戸恒 和人 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10217515)
根本 直 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (70357739)
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キーワード | NMR / メタボロミクス / 生活習慣病 / 慢性腎臓病 / 乳酸 / TCA回路 / 補酵素 |
研究概要 |
22年度研究成果: 「意義・重要性」慢性腎臓病とその進行した病態である血液透析についてNMR法メタボロミクス解析を行った。透析患者は年々増加し30万人に及ぶことや、一生続く透析治療に伴う合併症が解決されていないことを考えると正確な病態把握や診断の新たな実用指標が必要とされている。すでにわれわれはNMRメタボロミクスで透析患者血漿の解析を行い、治療後に乳酸値が増加することを見出した。 「内容」今年度は新たに治療中廃液を経時的にNMR測定したところ、乳酸が出続け途中でさらに増えることなどを見出した。廃液は採取が非侵襲的で患者に負担がないこと、アルブミンなどの高分子を含まず低分子メボライト・プロファイルが得られることはNMR計測と病態観察に適したサンプルとして新規で有意味である。乳酸増加の原因は患者のエネルギー代謝の偏り、グルコース・脂質代謝異常が根底にあり、治療中に末梢血循環不全による解糖系亢進やTCA回路反応傷害などが直接原因と考えられる。廃液のNMRスペクトル観察で乳酸・ピルビン酸比やアミノ酸、有機酸の排出挙動と、治療時の症状(痙攣や疲労、血圧低下など)と相関があることが示唆された。そこで患者症状に対してTCA回路の正常化を図る目的で補酵素であるビタミンを投与する臨床実験を行った結果、症状に著効を見た。現在ビタミン投与前後の血漿を解析し、メタボライトの変動を評価した。定量評価に関しては、高分子成分を含む血漿においても内部標準物質として蟻酸が有効であることを見出し、各種生体サンプルのマーカー定量においてはNMR法基盤技術を構築できた。乳酸というありふれたマーカーの発見を入り口として糖代謝・脂質代謝およびエネルギー代謝に関与する補酵素投与を発想した。この臨床実験が効果を見たので、投与に連動するメタボライトの同定と定量を行う。透析・腎臓病・糖尿病患者の代謝不全解析に新規指標を与えるものとなる。
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