研究課題/領域番号 |
22590038
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小原 敬士 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10284390)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生体分子 / 化学物理 / 薬剤反応性 / 抗酸化 / 一重項酸素 |
研究概要 |
植物抽出物や血清タンパクなどの天然物質の一重項酸素消去速度定数を微量の試料で計測してその構造活性相関についての検討を可能とすることを目指し、近赤外発光寿命のスポット計測の技術開発と応用に関する下記の検討を行った。 (1)一重項酸素近赤外発光の時間分解計測により、難水溶性のカプサイシンをはじめとする香辛料成分6種について、シクロデキストリンにより水溶液へ可溶化した試料で一重項酸素消去活性の検討を行った。可溶化した成分が水溶液中で生成した一重項酸素を定量的に消去する動態が観測され、その消去反応の速度定数を決定することができた。シクロデキストリンによる包接化の影響は、溶液の粘性係数の増大と分子サイズの増大から説明でき、成分それぞれの一重項酸素消去活性について、定量的に比較可能なデータを得られることが分かった。また、シクロデキストリンに包接させた状態でpH依存性などのデータを得ることも可能であり、この方法が広範囲な用途に応用できることが分かった。 (2)一重項酸素近赤外発光の2次元スポットスキャニング計測についての基礎検討を行った。光増感剤を含有したアガロースのヒドロゲルを調製し、一重項酸素発光のスポット計測を試みた。一重項酸素のゲル中での生成に伴う発光の増大と減衰を直接時間分解観測することができ、その時間依存性の水中との違いが検討可能であることが分かった。しかし、計測の積算時間中に、励起光による光ダメージで増感剤の脱色が生じることから、現在の条件ではスポットされた成分の活性計測は困難であることも明らかとなった。また、強力な一重項酸素消去剤であるカロテノイドをセルロースシートにスポットし、このシートを光増感剤水溶液に含浸してスポット計測を試みた結果、一重項酸素発光の時間変化を得ることができたが、カロテノイドによる一重項酸素消去の効果は判別できなかった。さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、植物由来成分の少量試料での計測による抗酸化活性評価が実施でき、特に難水溶性の香辛料成分をシクロデキストリンで水溶液(軽水)に可溶化した状態での活性評価を行うことに成功し、大きな成果が得られた。一方で、ゲルやセルロースシート上での活性評価については、光ダメージの影響が大きく、最終目標のゲル・TLC上のスポットされた活性成分の評価は、数十秒以内の短時間で高感度計測を実現する装置的な改良が必要なことが判明した。本研究課題は、問題点の抽出面も含めておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、申請当初の計画に沿って研究を推進する。ただし、測定時間の短縮については現有の装置ではすでに限界にあり、現状ではゲル等の固形試料の光ダメージは避けられない。本課題の最終年度であるので、さらにゲルやシート試料について現段階で可能な検討を実施して、問題点を明確化し、次のステップとしての発展課題を掲げて、次年度以降の科研費獲得を目指す。
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