研究概要 |
金属イオンはリン酸基のカウンターイオンの役割以外に、核酸2重らせんの塩基間または塩基対間に組み込むことにより、多様な構造を導入できることが知られている。金属種は鉄イオンを第一義的に念頭にした、この医療面への応用を考えて、様々な金属種の配位様式の特徴および他薬剤との併用での応用を計画した。好中球に作用し、発ガンに関わるHelicobacter pylori neutrophil activating protein(HP-NAP)は多量体を形成し、球形の殻状構造で、中空内部の溶媒域にFe(2+)を無害なFe(3+)として取り込み、鉄イオンを貯蔵するフェリチンと同様な機能をもつ。これを金属イオンの標的部位へのDDS蛋白単体の機能をもたせる基礎研究として、X線結晶学的アプローチを進めた。金属を含まないアポ結晶を利用した多様なFeなどの金属挿入法によって、種々の結晶を得て放射光施設(PF)にて回折強度データを収集し解析した。金属イオンの取り込み、放出に関与する細孔(ポア)について、金属種特異性などを明らかにできた。 テロメア核酸では、K,NaイオンがG-カルテット間中央に組み込まれ、金属種によって多様な構造変化することが知られている。また、この構造は鉄イオンを含むポルフィリンによって特異的な相互作用によって安定化されるので、これに着目した酵素作用阻害による制癌剤の薬物設計を計画した。さらに金属とジケト類との配位様式を念頭にした関連タンパク質の立体構造に基づく薬物設計を行った。 核酸塩基間での金属イオンの配位による挿入は、2重らせん構造をあまり変化させないために、U-U塩基対およびC-C塩基対を含む鎖長13のオリゴヌクレオチドを用いて、金属配位した2重らせん核酸の結晶化を行っている。塩基配列および鎖長数などが、結晶成長の要因でもあるので、計画的で網羅的な検索を進めた。
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