研究課題/領域番号 |
22590040
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
尾関 哲也 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (60277259)
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キーワード | 粒子設計 / DDS |
研究概要 |
悪性脳腫瘍治療のためのナノ粒子の設計に関しては、腫瘍細胞に高発現する葉酸レセプター(FR)結合サイトとの強力な会合能を有する葉酸7分岐修飾βシクロデキストリン(per-FOL-β-CD)の2級水酸基にジスルフィド結合を有するスペーサーアームを導入し、その末端に抗がん剤であるドキソルビシン(DOX)を結合させた葉酸7分岐修飾βシクロデキストリン/ドキソルビシン結合体(per-FOL-β-CD-ss.DOX)を合成し、悪性脳腫瘍細胞に対するターゲティング能の評価を行った。per-fol-β-CDを出発物質とし、2級水酸基をトシル化し、エポキシ基の生成とそこへのシスタミンモノコハク酸アミドの付加反応を行った。さらに縮合剤DMT-MMを用いて、末端にDOXを結合させ、per-FOL-β-CD-ss-DOXを調製した。ラットグリオーマC6(FR高発現(FR(+)))細胞におけるper-FOL-β-CD-ss-DOXの細胞内取り込みを、共焦点レーザー顕微鏡、フローサイトメトリーで検討した結果、per-FOL-β-CD-ss-DOXはFRを介して、DOX単体よりも有意にC6(FR(+))細胞に取り込まれることが示唆された。 結核治療のためのナノ粒子の設計に関しては、新規抗結核候補薬として期待されるが水溶性がきわめて高く製剤化が困難なOCT313のナノ粒子化を検し、ダブルエマルション法によりS/O/W型のミセル様ナノ粒子の設計を試みた。薬剤水溶液のモデルとしてエリスリトール(50mg/mL)と疎水性界面活性剤であるER-290を溶解させたシクロヘキサン溶液を1:1~1:1の重量比で混合し、ホモジナイズ(25,000rpm)を行うことでW/Oエマルションを調製後、凍結乾燥にかけた。得られたものを大豆油中に分散させ、水溶性界面活性剤であるPoloxamer 188溶液を薬物に対して1:1~1:50の重量比で混合し、ホモジナイズを行うことでS/O/Wエマルションを調製した。In vitro条件下でマウス由来マクロファージ細胞株(RAW264.7細胞)において取り込みが観察されており、S/O/Wエマルションは経肺製剤として期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性脳腫瘍治療のための粒子設計については、がん抑制ペプチドと細胞透過性ペプチドを融合したペプチドの腫瘍内長期徐放による治療効果の向上についてはおおむね目的を達成し、現在は腫瘍細胞へのターゲティング分子の設計を行っている。結核治療のための粒子設計については、新たな治療宅のOCT313のナノ粒子設計成功し、その最適化検討を行っている。この粒子のマウス由来マクロファージ細胞株への効率的な取り込みを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
葉酸7分岐修飾βシクロデキストリン(per-FOL-β-CD)を用いた悪性脳腫瘍細胞ターゲティング分子の設計については、細胞取り込みを向上させる検討を行う予定である。ポリペプチドミセルの設計については脂質ナノ粒子あるいはゲルの応用に置き換える必要がある。結核治療の検討においては、粒子の経肺投与製剤としての有用性の検討とそのための処方検討を行う。また、弱毒化結核菌株のBCGを感染させたマクロファージを用いた殺細胞効果の検討や、in vivoにおける肺への送達性、肺胞マクロファージへの取り込みの評価を試みる。
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