研究概要 |
4種のカテコールエストロゲン(2-OH-estrone(E_1) : 2-OH-E_1, 4-OH-E_1, 2-OH-estradiol(E_2) : 2-OH-E_2, 4-OH-E_2)の酸化によって生成するオルトキノンは、化学的に不安定な分子種であるため、最初に、オルトキノンを安定な誘導体とする検討を行った。すなわち、カテコールエストロゲンを含むアセトニトリル溶液に、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を添加し、オルトキノンを生成させたのち、オルトフェニレンジアミンのジメチルホルムアミド溶液を室温で反応させ、フェナジン(Phz)誘導体とした。生成したエストロゲンオルトキノンのPhz誘導体は、固相抽出法で精製し、高速液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(HPLC-ESI-MS/MS)法で分析すると、これら4種のカテコールエストロゲンから得られるオルトキノンのPhz誘導体は、ESI-MSでプロトン化分子を基準ピークとして与え、HPLCで完全に分離できた。選択的反応検出(SRM : [MH]+→m/231)法による定量限界は5ng/mL(カテコールエストロゲン換算濃度)であった。定量分析には安定同位体(重水素)で標識された[^2H_3]-4-OH-E_2-Phzを内標準に用い、バリデーション試験を行った。いずれのカテコールエストロゲンより得られるオルトキノンのPhz誘導体のHPLC-ESI-MS/MSのSRMによる内標準法に定量の精度と正確度は3.1-12.6%および89.6-113.0%であった。特に、Phz誘導体化は、オルトキノン構造に選択的で、ヒドロキノン(カテコール構造)とは反応しないことも判明した。本法は、希釈血清やラット肝ミクロソーム画分など、タンパクを含むマトリクスを用いた場合にも応用できることを明らかにした。
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