研究課題/領域番号 |
22590041
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
山下 幸和 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (80382670)
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研究分担者 |
小松 祥子 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (00438566)
加藤 創 東北薬科大学, 薬学部, 助手 (80584458)
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キーワード | エストロゲン / オルトキノン / 乳がん / LC-ESI-MS/MS / ヘムタンパク |
研究概要 |
前年度の研究成果をもとに、高速液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(HPLC-ESI-MS/MS)法を基盤とし、カテコールエストロゲンのエストロゲンオルトキノンへの変換を定量的に測定するための標準品となる、4種のエストロゲンオルトキノンのフェナジン誘導体合成を行い、それらの構造を確認した。次いで、生体内においてカテコールエストロゲンからエストロゲンオルトキノンへの酸化が、どのような分子によって触媒されるか検討を行った。その結果、チロシナーゼ、ペルオキシダーゼ、ヘモグロビンあるいはミオグロビンのような金属をコアに持つタンパク存在により、カテコールエストロゲンからエストロゲンオルトキノンへの変換が触媒されることがわかった。また、しかし、カタラーゼではその変換は認められず、触媒作用の異なることが示唆された。さらに、これらのタンパクのコアとなっている金属イオンの影響については、上記タンパクを用いた実験に対応する同等レベルの濃度では、カテコールエストロゲンからエストロゲンオルトキノン生成は認められなかった。また、高濃度のCu^<2+>(0.1mg/mL)の存在のみ、エスドロゲンオルトキノンへの変換を促進し、Fe^<3+>(0.1mg/mL)では促進されなかった。これらの金属イオンの酸化メカニズムの差異についても、今後検討を行う。さらに、カテコールエストロゲンからエストロゲンオルトキノンへの変換は、これらのタンパクや金属イオンの非存在化においても起こり得ることが判明しており、これらの金属イオンあるいは金属イオンをコアに持つタンパクや酵素の作用を特異的に検出、定量化するためには、非特異的酸化反応を最小限に抑える工夫が必須であることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、カテコールエスロゲンからNaIO_4または活性MnO2を用いたエストロゲンオルトキノンへの定量的な変換並びにオルトフェニレンジアミンによるフェナジン誘導体生成法について検討を行い、LC-ESI-MS/MSによる定量法を確立した。また、本年度は開発した定量法を用い、各種ヘムタンパク、銅含有タンパクのカテコールエストロゲンからオルトキノンへの変換における触媒作用について検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
カテコールエストロゲンからエストロゲンオルトキノンの生成ならびにフェナジン誘導体化による捕捉が可能となったため、今年度は、カテコールエストロゲンからエストロゲンオルトキノンを定量的に生成させ、タンパクとの付加体形成の予備実験として、システイン、グルタチオンなどの求核性試薬との反応性並びに生成物の化学構造と安定性を精査する。また、タンパクとの付加体分析法開発を進め、乳がんの発がん機構の解明の一助とする。
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