リガンド内の水素結合性官能基を仮想水和化する半自動のプログラムを作成した。そして、プログラムの検証のために、キチナーゼBと新規阻害剤とのドッキング計算に適用した。このタンパク質と既知阻害剤の複合体X線結晶構造において、6個の水分子がタンパク質-リガンド間を架橋していることが知られている。新規阻害剤とのドッキング計算において、仮想水和化したリガンドが、仮想水和化していない元のリガンドより自由エネルギー的に有利であるとして選択された。既知阻害剤とキチナーゼBを架橋していた6個の水分子の内、新規阻害剤では、3個の水分子が保存されていた。この仮想水和化したリガンドとキチナーゼBとの複合体モデルは、NMRより得られた複合体構造情報と正しく一致した。この計算により、仮想的水和リガンドドッキング法の有効性が証明された。また、作成したリガンド仮想水和化プログラムの有効性と改良すべき点が明らかになった。今後、更なる改良を加え、完全自動化したリガンド仮想水和化プログラムを作成する。 また、検証用データセットとして、タンパク質-リガンド複合体構造のみを収集したデータベースPDBbindから、架橋水が介在している複合体構造とそうでないもののより分けを行った。今後、このデータセットを用いて、更なる検証を行う予定である。
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