研究課題/領域番号 |
22590042
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
山乙 教之 北里大学, 薬学部, 助教 (60230322)
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キーワード | ドッキング / リガンド / 結晶水 / 酵素 / 蛋白質 / 水素結合 / 相互作用 / 複合体 |
研究概要 |
現在開発中の手法に基づき、ブラジル産プロポリスに含まれる2種の成分、artepillin C(C3)とその誘導体(C4)について、PPARγとJNK1に対するドッキング計算を行った。その結果、C3はPPARγのアゴニストとして働き、C4はJNK1の阻害剤として働くことを明らかにした。従って、C3とC4は、化学構造が類似しているにもかかわらず、異なる標的タンパク質に結合し、それゆえ、異なる機構によりアディポネクチンの発現低下を抑制することが分かった。 また、新規抗がん剤のリード化合物として期待されているAMF-26を、ゴルジ体の小胞輸送に関与するArf1-ArfGEFタンパク質-タンパク質複合体にドッキングし、分子動力学法によりドッキングモデルの精密化を行った。それにより、AMF-26が、既知のゴルジ体阻害剤Brefeldin A(BFA)と同じ結合サイトに結合すること、すなわち、AMF-26のゴルジ体破壊作用が、BFAと同じ機構によることを明らかにした。 これまで、検証用データセット構築のために、タンパク質-リガンド複合体構造のみを収集したデータベースPDBbindから、架橋水が介在している複合体構造とそうでないもののより分けを行ってきた。これにより、タンパク質-リガンド複合体形成において架橋水が関与する場合のリガンド側フラグメント(化合物の構成要素)やタンパク質側サブサイト(アミノ酸残基の空間配置)について、情報の抽出が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のタンパク質-リガンド複合体系において、仮想的水和リガンドドッキング法の有用性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発中の仮想的水和リガンドドッキング法では、リガンドの官能基の中で水分子と水素結合を形成し得る全ての箇所において、水分子との水素結合を実際の結合として結び、仮想的水和リガンドを作成する必要があった。しかしながら、全通りの組み合わせの数だけ、仮想的水和リガンドを作成しドッキングするのは、計算時間がかかる。今後、タンパク質-リガンド複合体形成において架橋水が関与する場合のリガンド側フラグメントやタンパク質側サブサイトについての情報を利用して、作成するべき仮想的水和リガンド数の削減を試みる予定である。
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