RNA干渉(RNAi)は遺伝子の機能解析に利用されているが、白血病細胞や神経細胞のような遺伝子導入効率が低い細胞ではRNAiの利用が困難である。 一般に、細胞内に導入されたプラスミドベクターは、細胞質を経由し、核内に到達して遺伝子を発現する。ところが、細胞質から核内への移行効率は非常に低く、導入されたプラスミドベクターの大部分は細胞質に留まる。そのため、従来遺伝子導入効率が低いとされる細胞でも、実際は相当量のベクターが細胞内に導入されると考えられる。そこで、細胞質内で直接siRNAを発現できるベクターは、遺伝子導入効率が低い細胞の機能解析に利用できるRNAiベクターと成り得る。以上のことから、本研究では細胞質内で直接siRNAを発現できるRNAiベクターを開発することを目的とする。 本年度は、昨年度組換えたプラスミドベクター(T7RNAポリメラーゼによってがん抑制遺伝子p53に対するsiRNA発現が誘導されるプラスミドベクターpT7-RNAi-p53、pT7-RNAi-p53の対照であるpT7-RNAi-L及びpT7-RNAi-LacZ)の導入したオリゴDNAの配列を確認し、期待した配列であることを確認した。次に新規RNAiベクターシステムが機能するのか培養MCF7細胞及びA549細胞を用いて検討するため、β-ガラクトシダーゼ発現プラスミドpCMVβを用いてプラスミドベクターの遺伝子導入条件の検討を行った。24ウェルプレートに細胞を播種し、SuperFect試薬(キアゲン社製)を用いてpCMVβを遺伝子導入した後、β-ガラクトシダーゼ染色を行ったが、青く染色された細胞は観察できなかった。今後、β-ガラクトシダーゼより検出感度の高いルシフェラーゼを用いた検出系を用いて、新規RNAiベクターシステムの機能を確認する予定である。
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