研究課題/領域番号 |
22590045
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
佐藤 卓史 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (80257899)
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キーワード | がん / 白金錯体 / アポトーシス |
研究概要 |
当初、AMPZの架橋配位子であるピラゾールの4位に官能基を導入し、その部分を介してアルブミンにAMPZを結合させて、これを免疫原として抗体を調製することを計画していた。しかしながら、この方法による抗体作成には成功しなかった。そこで、AMPZのもう一方の架橋配位子である水酸化物イオンを塩化物イオン2つに置換した新たな錯体を合成し、この部分を介してAMPZをアルブミンに結合させた。これを免疫原として抗体を調製した。ただ、この抗体は、AMPZだけでなく、ピラゾールにも交差し、そのAMPZとの親和性もあまり高くなかった。そのため、直接細胞を抗体染色して、AMPZの局在を明らかにすることはできなかった。しかしながら、細胞を分画後、AMPZ処理群と未処理群について、抗体を用いた比較およびICP-MSによる自金量の測定を行ったところ、明らかに、核、ミトコンドリア、ミクロソーム画分が抗体によって認識される物質を含み、かつ白金含量が高かった。また、プロテオーム解析では、直接AMPZが反応していると思われるタンパク質は確認されなかったが、シスプラチンの場合とは大きく異なり、アポトーシス関連タンパク質よりむしろ、発現が制御された結果として細胞増殖や細胞周期にかかわるタンパク質に変動が見られた。このことから、AMPZの標的がシスプラチンの場合のDNAとは異なっている可能性が示唆された。さらに、ウエスタンブロティングの結果、シスプラチン感受性細胞では、シスプラチンでもAMPZによってもシトクロームCの細胞質レベルの増加が認められたが、シスプラチン耐性細胞では、シスプラチンでもAMPZによってもシトクロームCの細胞質レベルの増加は認められなかった。しかしながら、シスプラチンの場合とは異なり、AMPZではアポトーシスが誘導された細胞が確認された。これらのことから、AMPZの機序はシスプラチンとは全く異なっており、AMPZは新しいタイプの白金制がん剤の親化合物になり得るものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認識能の高い抗体を得ることができていないため、対象化合物であるAMPZの細胞内分布の正確な追跡は、行えていないが、当初、予想していた小胞体にも化合物が分布していることは明らかになった。アポトーシス関連タンパク質の解析から、小胞体ストレスの関与が示唆されており、本研究課題の主たる目的であるAMPZの作用機序の解析はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのプロテオーム解析においては、小胞体ストレスに関与する異常構造をもつタンパク質の検出には至っていない。そのため、今後はタンパク質の網羅的解析による異常タンパク質の解析から、アポトーシス関連タンパク質のウエスタンブロット法による解析に重点をおき、小胞体ストレスが、AMPZによるアポトーシス誘導に関与しているかを明らかにしていく。
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