研究課題
本研究課題では、アポリポタンパク質のアミノ酸変異や遺伝子多型による脂質異常症やアミロイドーシス、神経変性疾患などの発症機序を、タンパク質のフォールディング構造異常という物理化学的観点から解明することを目的とする。平成22年度は、まず、低HDL血症でみられるヒトアポA-I変異体をターゲットとして、変異によるN末ヘリックスバンドル構造の安定性やC末ドメインヘリックス構造の変化、さらには、それらの構造変化による細胞脂質膜可溶化・HDL粒子形成作用への影響の解析を行った。その結果1.N末ドメインアミノ酸の変異・欠失によるアポA-Iのヘリックスバンドル構造の不安定化が、タンパク質疎水性領域の露出を誘起することで脂質膜との相互作用を促進すること2.C末ヘリックス領域アミノ酸の変異・欠失は、C末端ヘリックス構造の部分的破壊による脂質結合性・細胞膜可溶化能の低下を引き起こすことで、HDL粒子形成異常の原因となること3.アポA-Iの種差間のホモロジー解析に基づいた部位特異的アミノ酸改変により、ヒトのC末端に多く存在する芳香族アミノ酸は、両親媒性ヘリックス疎水面の疎水性度の増大によってC末ドメインの高親和性脂質結合を担うとともに,N末-C末ドメイン間の疎水的相互作用に関与している可能性があることなどが明らかとなった。さらに、アポA-IのHDL結合構造の解析に向けて、部位特異的にシステイン残基を導入した新たな変異体の設計・作製を行った。
すべて 2011 2010
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