研究課題
本研究課題では、アポリポタンパク質のアミノ酸変異や遺伝子多型による脂質異常症やアミロイドーシス、神経変性疾患などの発症機序を、タンパク質のフォールディング構造異常という物理化学的観点から解明することを目的としている。平成24年度は、全身性アミロイドーシスの原因となるヒト変異アポA-Iに焦点を絞り、そのフォールディング構造あるいは脂質結合構造の異常と脂質代謝調節異常やアミロイドーシス発症との相関を解析することで、アポリポタンパク質構造異常による疾患発症の分子メカニズム解明を試みた。 ヒトアポA-Iのアミロイドーシス変異にはN末領域アミノ酸のアルギニン残基への置換が多く見られることから、典型的変異として26番目のグリシンがアルギニンに変異したG26Rをターゲットとして、その全長変異体や組織沈着領域であるN末フラグメントを大腸菌発現系によって作製し、それらのアミロイド線維形成能や線維形態の評価を行った。その結果、G26R変異がアポA-Iヘリックスバンドル構造を不安定化するとともに、N末1-83残基フラグメントの生理的中性環境下でのアミロイド線維化を促進するという二元的な役割を有していることを世界で初めて見出した(JBC 288, 2848, 2013)。また、構造モデル予測により、R26がD24及びD28との塩橋形成によってβシート構造を安定化していることが示唆された。今後の展開として、生体環境を模倣した不均一膜系や細胞外マトリックスでのアポA-Iアミロイド線維形成機構の物理化学的解析、細胞膜やリポタンパク質環境下におけるアポA-Iアミロイドのタンパク質超分子構造や線維凝集体の組織障害作用の解析などを進めていく予定である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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