24年度は、実施計画に基づき、生体ガスや皮膚滲出液のサンプリング・前処理法について検討した。特に、体臭原因物質として、2-ノネナールなどのアルデヒド類を対象として、固相マイクロ抽出(SPME)法に基づくサンプリング分析法を確立し、喫煙による影響や、食品摂取による体臭変化のモデル実験として食品成分と2-ノネナールとの相互作用による消臭効果を検討した。さらに、ストレスや疲労関連ホルモン類や酸化ストレス関連化合物をバイオマーカーとして、インチューブSPME法に基づく健康および病態診断のための簡便迅速な高感度分析法を検討した。 1.本研究により、喫煙によりタバコ成分が皮膚ガスとして体表から放出されて体臭に影響することがわかった。また、2-ノネナールと抗酸化物質を含む食品との相互作用により消臭効果が得られることから、食品摂取は体臭変化に影響を与え、ポリフェノールなどの機能性食品によるデオドラント効果が期待された。 2.様々な疾患の引き金となるストレスや疲労のバイオマーカーとして唾液中コルチゾールや男性ホルモンのテストステロンやデヒドロエピアンドロステロンを、また糖尿病、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、肝疾患、神経疾患など様々な疾患発症に関与する酸化ストレスバイオマーカーとして、尿中8-isoprostane及び8-OHdGをインチューブSPME法により効率よく抽出濃縮し、LC-MS/MS法との連結により選択的かつ高感度分析する方法を開発した。本法を用いて、喫煙による酸化ストレスの影響を解析し、評価法として有用であることがわかった。 本研究は、非侵襲的かつ簡便な生体成分のサンプリング、SPME法による効率的な抽出濃縮、MS法との連携による選択的かつ高感度な分析を可能とし、口臭や体臭の診断や消臭効果の解析、疾病診断などへの応用が期待される。
|