トリアリルメチルラジカルを一種類合成し、性質を調べた。 1.トリアリルメチルラジカルの合成:トリアリルメチルラジカル類縁体のうちESRスペクトル上で1本のシグナルを示し、最も合成の容易なperchlorotriphenylmethyl triethylesterラジカル(PTM-TE)を、既報を参考にして合成した。 2.PTM-TEのESRスペクトル:PTM-TEは水にほとんど溶けず、クロロホルムなどの有機溶媒に容易に溶けた。PTM-TE溶液のESRスペクトルは、^<13>Cによる小さな2つのサテライトシグナルを伴った線幅約0.14mTの1本のシグナルから成った。溶媒をミネラルオイルに替えて粘性を高めたところ、ESRシグナルの形状はほとんど変化せず、薬物担体へ取り込んだのちも幅の狭いESRシグナルが期待できる。残念ながら、用いた有機溶媒中でのPTM-TEのESRシグナルの酸素応答性は満足のいくものではなかった。 3.PTM-TE含有リポソーム:PTM-TEの疎水性である性質を利用して、リポソームの標識への応用を検討した。PTM-TEは、卵黄レシチンリポソームで構成されるリポソーム膜に容易に取り込まれた。ESRスペクトルから解析したところ、卵黄レシチンに対するPTM-TEのモル比が約0.017以上では、膜内でクラスターを形成することがわかり、リポソーム標識にはこの濃度が最適であることが示唆された。また、膜中にコレステロールが存在するとPTM-TEのクラスター形成が促進された。
|