研究概要 |
1. 既報に従い、2,2,6,6-tetramethylpiperidin-1-oxyl(TEMPO)をデキストラン(MW 40,000)に結合させデキストラン-TEMPOを合成した。結合比は、グルコース残基:TEMPO=57:1であった。デキストラン-TEMPOの濃度依存的にMRIシグナルの強調効果が見られ、その効果は未結合のTEMPOと同程度であった。しかし、マウスにおいては、残念ながら造影効果は見られなかった。 2. MRIでの検出をより容易にするため、デキストランにDTPAを介してGdをキレートさせ、Gd-デキストランを合成した。結合率は、グルコース残基:Gd=1:0.5から1:1であった。ファントムにてMRI増強効果を調べたところ、市販のマグネビスト(Gd-DTPA)と比較して造影効果は1/4程度であることがわかった。マウスに投与してMRIを撮像したところ、血管が描画され、造影剤が血管内に留まっている様子が確認された。血管から漏れ出た部分で造影効果が高まると考えられ、癌組織や血管障害の診断に利用できると期待される。 3. Gdが溶液中で近傍の他の常磁性物質のESRシグナルを広幅化することを利用して、ESRを用いた簡易定量法を開発した。4-Oxo-TEMPOのESRシグナルはGd及びそのキレート化合物の濃度依存的に広幅化し、直線性が得られた。定量は簡便であるため、合成造影剤の評価や造影剤の検定に利用できる。 4. デキストランにエチレンジアミンをスペーサートしてクロリンe6を結合させたが、結合後クロリン結合デキストランは水に不溶性となった。可溶化にはポリエチレングリコール化などの処置をとる必要があることがわかった。
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