アルツハイマー病などの神経炎症疾患の客観的画像診断法の確立を目的として、ミクログリア上に発現する代謝調節型プリン受容体のP2Y12受容体およびアデノシンA2a受容体変化について免疫染色法およびオートラジオグラフィー法により検証を行った。さらにこれらの受容体を画像化する陽電子断層撮像法(PET)リガンド開発を行った。P2Y12受容体の免疫染色法の結果から、正常脳ではP2Y12受容体陽性のミクログリアが確認できたが、リン酸化タウ増加によって細胞死を伴うモデルマウス(Tauマウス)の脳病巣部ではP2Y12受容体陽性にミクログリアは激減した。一方老人斑をのみ形成するモデルマウス(APPマウス)ではP2Y12受容体陽性にミクログリアの増加が認められた。また、[^3H]ZM241385のオートラジオグラフィーでアデノシンA2a受容体の変化を種々のモデルマウスで調べたところAPPマウスの老人斑周囲でA2a結合が増加したが、Tauマウスの海馬では結合量が減少した。これらのことから、P2Y12およびA2a受容体は毒性のないミクログリアで特異的に発現しており、神経変性を伴うミクログリアでは受容体の発現レベルが手詠歌することが明らかとなった。また、P2Y12受容体のPETリガンドとして[^<11>C]clopidogelを合成し、マウスで評価を行ったところ、脳へは高い移行が確認されたものの、受容体特異的な結合は確認できなかった。ClopidgrelはP2Y12受容体に対する非可逆的拮抗薬でありプロドラッグでもある。このことからP2Y12受容体のイメージングには競合的拮抗薬の標識合成が必要であると考えられた。
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