研究課題
本年度はP2Y12受容体PETリガンドの作製、ヒト死後脳切片を対象としたP2Y12受容体の免疫組織化学染色、アデノシンA2a受容体PETリガンドを用いたマウスの老人斑周囲のミクログリアイメージングについて検討を行った。前年度[^<11>C]clopidogrelの結果を受けて、次にP2Y12受容体拮抗薬AZD-6140の中枢移行性について調査した。この結果AZD-6140は脳への移行性が極めて悪いことが判明した。アルツハイマー病(AD)患者および非ADの死後脳切片を対象とした免疫組織染色を行ったところ、非AD死後脳切片ではミクログリアにP2Y12の発現が見られたが、AD患者ではP2Y12の染色は著しく減少していた。この結果はADモデルマウスの所見と一致しており、ADではP2Y12の発現が低下することが明らかとなった。AD死後脳およびアミロイド過剰形成マウス(APPマウス)の脳切片において、アデノシンA2a受容体リガンド[3H]ZM241385が老人斑で増加をすることを前年度明らかとした。そこでアデノシンA2a受容体PETリガンド[^<11>C]TMSXを用いAPPマウスの老人斑を描出できるか検討を行った。アミロイドPETリガンド[^<11>C]PIBのスキャンを施行したところ、APPマウスの海馬および大脳皮質に老人斑が形成していることを確認したが、[^<11>C]TMSXでは老人斑の発現する箇所への集積はほとんど見られなかった。また、[^<11>C]TMSXオートラジオグラフィーについても行ったが、[3H]ZM241385で見られるような老人斑への集積は見られなかった。[3H]ZM241385の老人斑への結合はTMSXで阻害されなかった為、ZM241385は老人斑周囲のミクログリアではなく老人斑そのものに結合していることが示唆された。
3: やや遅れている
有用性を見込んでいたP2Y12リガンドの脳移行性が著しく悪かったこと、アデノシンA2a受容体の結果がリガンド間で相反する結果となり、計画修正の必要性が出たため。
当初アデノシンA2aのイメージングを計画していたが、使用するリガンドによって異なる結果が生じた。最終年は神経炎症で同様に増加されるとされるアデノシンA3受容体にターゲットを変更し、免疫染色・リガンド開発に着手する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
FASEB J
巻: 26(3) ページ: 1204-1217
doi: 10.1096/fj.11-187740.
J Neurochem
巻: 121 ページ: 115-124
10.1111/j.1471-4159.2011.07348.x
Synapse
巻: 65(5) ページ: 452-455
doi: 10.1002/syn.20897.
http://www.nirs.go.jp/seika/brain/brain/index.html