CYP2C9は現在市販されている医薬品の約15%の代謝に関与するP450分子種である。本研究では、CYP2C9において、日本人から見出される多型、*3(Ile359Leu)、*28(Gln214Leu)、*30(Ala477Thr)が、種々の薬物の代謝活性に与える影響を、組み換え酵素を用いたin vitro機能解析系により明らかにする。さらにX線結晶構造解析及び中性子線構造解析により、これらの医薬品とCYP2C9の結合様式を同定し、多型によってもたらされる基質依存性の活性変化のメカニズムを解明する。機能解析及び立体構造解析の両面から、多型がCYP2C9タンパクに与える影響を明らかにし、多型の影響を受けにくい医薬品の設計のための基盤的情報を得ることを目的とする。 22年度は、昆虫細胞一バキュロウィルス系により大量発現させた野生型及び変異型酵素のCYP2C9活性を経口糖尿病薬のグリブリド(GLB)を基質とし、LC-MSを用いて測定した。まず、GLBがCYP2C9野生型酵素により主に4-trans hydroxycyclohexyl GLB(Ml)、4-cis hydroxycyclohexyl GLB(M2a)、3-cis hydroxycyclohexyl GLB(M2b)に代謝されることを明らかとした。*3及び*30変異型酵素の活性は、M1、M2a、M2bのすべての代謝物生成に対して、野生型酵素と比較して低下した。一方、*28変異型酵素の活性は、M1及びM2a生成に対しては野生型酵素より低下したが、M2b生成に対しては野生型酵素より活性が増大した。 以上のことから、CYP2C9*3のみならず、CYP2C9*28及び*30は、GLBの代謝及び薬剤応答性に影響を及ぼす可能性が示唆される。
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