研究課題
血液脳関門(BBB)により中枢神経系の生化学的な恒常性が高度に維持されているが、脳卒中やアルツハイマーになるとBBBの透過性が亢進する。平成22年度の研究成果として、マウスに高コレステロール食を給餌すると、血液中で好中球の割合が増加しMWP9を分泌し、BBBに存在する結合蛋白質を破壊することでBBBの透過性が亢進することを明らかにした。今年度は、薬剤により高コレステロール血症由来BBB透過性亢進が抑制されるかどうかを明らかにするとともに、脳内のコレステロール代謝や神経原繊維の経時的変化を観察することとした。高コレステロール食給餌C57B1/6マウスに、血清コレステロール低下作用薬(プラバスタチン、アトルバスタチン、エゼチミブ、コレスチラミンなど)を同時投与し、BBBの透過性亢進が抑制されるかについてMRIを用いて検討したところ、両スタチンとも効果がなく、エゼチミブやコレスチラミンでBBB透過性が抑制されていた。これまでの研究からスタチンはマウスの高コレステロール血症に対して効果がないことが知られているが、その結果と一致していた。一方、エゼチミブやコレスチラミン投与群では、血中コレステロール値が有意に低下し、血中の好中球の割合が減少し、MMP9値も低下していた。特に、胆汁酸排泄を促すコレスチラミンは血中のHDLレベルも有意に回復し、BBB透過性亢進に対する抑制効果が高かった。脳内の繊維化について病理切片を用いて観察したところ、高コレステロール食給餌マウスにおいて大きな変化はなかったが、細胞が所々で脱落していた。また、高コレステロール食給餌マウスでは脳内にコレステロールエステルがわずかに蓄積していることが解ったが、普通食マウスに比べて有為差はなかった。これは、今後の検討課題である。以上より、高コレステロール血症低下薬を用いることで、血液中の好中球数が減少し、MMP9が低下し、その結果BBB透過性亢進が抑制できると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
薬剤投与によるBBB透過性亢進への影響については、明確な結果を得ることができた。しかし、高コレステロール血症による、脳の変化は予測していたほど大きくなかった。従って、解析方法や標的物質に関して計画を練り直す必要がある。
高コレステロール血症により、脳内のコレステロール蓄積は変化したものの有意ではなかった。一方、これまでの知見では、mRNAの発現に影響していると考えられる。本年度は、中枢神経に由来する樹立細胞株を用いて、リポタンパクの影響を検討するなどの実験が必要となる。また、本研究より、血管の透過性はBBBのみではなく腎臓機能に影響することも明らかになった。従って、腎臓由来細胞を用いて、そのメカニズムを検討する必要も出てキ巻いた。以上より、次年度(H24年度)は、培養細胞を用い、リポタンパク質による影響を明らかにする実験が必要となる。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Mol.Pharm.
巻: 8 ページ: 1962-9
PMID:21744874
Biochim.Biophys.Acta-Gen.Subjects
巻: 1810 ページ: 1309-16
PMID:21767608
http://www.p.chiba-u.ac.jp/lab/byouyaku/index.html