マウスに高コレステロール食を給餌すると、好中球の割合が増加しMMP9を分泌し、BBBに存在する結合蛋白質を破壊することでその透過性が亢進することを明らかにしたため、そのメカニズムを明らかにした。BBB透過性が亢進したマウスにおける薬物の脳への移行性をSPECTを用いて解析した。高コレステロール食を3ヶ月以上行うと、SPECTプローブ(Na99mTcO4)の脳への移行性が診られた。 また、高コレステロール血症低下薬であるコレスチラミンやエゼチミブが薬物の移行性を阻害した。 高コレステロール血症状態では、血中にアクロレインが増加し、リポタンパク質を修飾することを見いだしたため、アクロレイン化リポタンパク質を用いて、動脈硬化の第一段階であるマクロファージの泡沫化が誘導されるかを明らかにした。アクロレイン化LDLはスカベンジャーレセプターを介してマクロファージに取り込まれ、リソソームを経由した後、余剰のコレステリルエステルは細胞質中で脂質球として蓄積されることが明らかになった。 高コレステロール食給餌マウスはBBBだけでなく腎臓の血管の透過性が亢進し、糸球体ろ過量や再吸収量が減少する等腎機能 が低下していることが示された。このメカニズムを明らかにするために、ブタ腎臓近位尿細管由来上皮細胞株LLC-PK14およびマウスメサンギウム細胞MES13に動脈硬化惹起性リポタンパク質であるβVLDLを添加したところ、LLC-PK14は増殖が抑制された。細胞はβVLDLを取り込み、リソソームを介して細胞内に蓄積されるが、その際遊離コレステロールが有意に増加していた。 以上より、食餌性高コレステロール血症によるBBB破壊の一部は薬物で防げること、アクロレイン化蛋白によりマクロファージが泡沫化すること、動脈硬化惹起性リポタンパク質に反応し増殖が抑制される腎臓の細胞が存在することが明らかになった。
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