研究課題
本研究では、ペルオキシソーム機能欠損による脱ミエリン化の分子機構を、ABCD1欠損マウス由来の初代培養アストロサイトを用いて自然免疫応答に焦点をあて明らかにすることを目的とした。前年度までの結果から、ABCD1を欠損したアストロサイトでは、LPS刺激に対するケモカインの応答に顕著な違いが認められた。そこで、初代培養アストロサイトについて様々な自然免疫のリガンドに対する炎症性サイトカインや抗ウイルスタンパク質関連遺伝子の発現の違いを解析した。その結果、poly(I:C) 処理ではCXCL10やviperinといった抗ウイルスタンパク質遺伝子とTLR3遺伝子の顕著な発現増加がみられたが、ABCD1欠損アストロサイトでは野生型と比べ、これらの遺伝子発現に大きな差は見られなかった。一方、細胞内にpoly(I:C)を導入した実験では、抗ウイルスタンパクの遺伝子発現が、ABCD1欠損アストロサイトで有意に高いことが確認された。この処理条件では、RIG-I遺伝子の発現増加は認められないが、MDA5遺伝子の発現増加が認められたことから、これらの抗ウイルスタンパクの遺伝子発現の違いは、MDA5を介した免疫応答によって引き起こされていると推察された。一方、野生型及びABCD1欠損アストロサイトにTLR4のリガンドであるLPSを処理した結果、IL-1b, CXCL1, CCL2では野生型に比べABCD1欠損アストロサイトで発現の増加が認められた。以上のことから、ABCD1欠損アストロサイトでは、様々なパターン認識受容体を介した自然免疫応答に違いがあることが明らかとなった。本研究成果は、ABCD1機能欠損の自然免疫応答を介した神経変性との関連性を検討していく上で、重要と考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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