研究概要 |
平成22年度は,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)による感覚神経を介した生体防御系の制御機構解明を最終目的とした本研究において,CGRP受容体欠損マウス(KOマウス)を使用し,食物アレルギーや接触性過敏症等のアレルギー疾患,自己免疫疾患のモデルにおける表現型を野生型マウスと比較解析した.食物アレルギーは卵白アルブミン誘発アレルギーモデルを使用した.本モデルにおいてKOマウスは,顕著な下痢の誘発抑制が認められた.この表現型は,KOマウスの蠕動運動低下が起因していることが明らかになった.接触性過敏症モデルとしては,TNCB誘発接触過敏症モデルを使用した.このモデルはヘルパーT細胞(Th)1型反応により誘導される.KOマウスは,このモデルにおいて接触過敏反応を促進させた.既にCGRPはTh2型反応を促進することを明らかとしていることから,KOマウスではこのシグナルが伝達されないことからTh1型モデルである本反応が促進したものと考えている.さらに自己免疫疾患モデルとして,ヒト多発性硬化症モデルである自己免疫性脳脊髄炎モデルを使用した.その結果,KOマウスは顕著な麻痺抑制が認められた.この結果は,CGRPアンタゴニストが多発性硬化症の治療薬となる可能性を強く示唆した.また幼若マウスに化学物質を塗布し,成体期におけるCGRP含有神経を免疫蛍光染色法により解析した.その結果,化学物質刺激は顕著なCGRP含有神経伸長をもたらすことが明らかとなってきた.以上の結果より,CGRPシグナル伝達は生体防御系の制御にはたいへん重要な機能を演じていることが示されたと同時に,この研究成果を用いた難治性疾患の治療創薬の可能性も認められたことは大きな成果と考える
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