研究課題/領域番号 |
22590063
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
松本 健一 島根大学, 総合科学研究支援センター, 教授 (30202328)
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キーワード | 血管疾患 / 石灰化胸部大動脈瘤 / 石灰化腹部大動脈瘤 / 石灰化大動脈弁 / テネイシンファミリー / プロテオミクス解析 |
研究概要 |
本年度は、血管疾患や心疾患におけるテネイシン(TN)ファミリー蛋白質の発現や疾患と関連して発現変動する蛋白質の網羅的プロテオミクス解析を行った。今年度は昨年度から引き続き行っている石灰化腹部大動脈瘤(CAA)組織や石灰化胸部大動脈瘤(CTA)組織の解析と、今年度から新たに石灰化大動脈弁組織のプロテオミクス解析を行った。大動脈瘤の病態組織と正常組織からの細胞抽出液をトリプシン消化後、異なるiTRAQ試薬で標識し、陽イオン交換カラムとNano LCクロマトグラフィーにより分画し、MALDI-TOF/TOF MS/MSシステムにより、発現量に差のある蛋白質の同定を網羅的に行った。その結果、8つの石灰化大動脈弁組織の解析により、8サンプルの内、6サンプル以上において、共通に発現変動が見られた105個の蛋白質を同定した。また、発現が1.3倍以上増加した蛋白質を34個同定し、一方0.77倍未満の減少した蛋白質を39個同定した。石灰化大動脈弁組織において正常組織に比べて最も発現増加した蛋白質はfetuin A(6.5倍)で、最も発現減少した蛋白質はTNファミリーの一つのテネイシンX(TNX)(0.37倍)であった。また、興味深いことにI型コラーゲンやVI型コラーゲンやデコリンやフィブロモジュリン等のコラーゲン線維形成制御蛋白質の発現減少も明らかとなった。また、野生型マウスの腹部大動脈に動脈瘤誘導物質である1.25M CaCl_2の塗布を行い、約10週間後に、塗布部位における腹部動脈瘤を5個採取し、コントロールとしてPBSを塗布した血管壁を採取し、ヒトの場合と同様に発現変動プロテオミクス解析を行った。これまでに2回の実験では、発現変動が見られた82個の蛋白質を同定した。現在、野生型マウスにおいて、さらにサンプル数を増やし、腹部大動脈瘤形成実験を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石灰化大動脈弁組織と正常組織由来の発現変動網羅プロテオミクス解析とその後の発現クラスター解析により、大動脈弁の石灰化に伴い発現減少する蛋白質としてTNXとコラーゲン線維形成を制御する蛋白質を同定できたことは興味深い。また、腹部大動脈瘤形成マウスの大動脈部位と正常血管における発現プロテオミクス解析も進みつつあり、概ね順調に進展している。また、TNファミリーの血中濃度測定系に関して、感度の高いTNXのサンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)系を構築できた。現在、テネイシンW(TNW)の血中濃度測定のための鋭敏なELISA測定系の開発を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに本研究で得られた実験結果を纏める方向にもっていく。また、腹部大動脈瘤形成マウスの大動脈瘤部位と正常血管部位における発現プロテオミクス解析をさらに進め、ヒト患者組織で得られたデータと比較・検討を行う。また、TNX欠損マウスを用い腹部大動脈瘤形成を引き起こし、大動脈瘤部位のプロテオーム解析を行う。その後、野生型マウスにおける大動脈瘤形成の結果と比較し、TNXの腹部大動脈瘤形成に及ぼす役割を探る。また、各種血管疾患(大動脈瘤や石灰化血管や石灰化大動脈弁等)患者の血清と健常人血清を用いて、血管疾患における発現変動プロテオミクス解析を行う。また、TNW血中濃度測定のためのELISA測定系の開発をさらに進める。
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