研究課題
複数の抗菌薬に対して耐性を獲得した多剤耐性肺炎桿菌が、欧米を中心とした世界中で報告され問題となっている。私は肺炎桿菌の多剤耐性に係る遺伝子を明らかにすることを目的として、抗菌薬に対する感受性が高い肺炎桿菌ATCC10031株から、抗菌薬多剤耐性変異株を分離し、中でも高度多剤耐性を示した13株のうち、12株について発現が上昇した遺伝子を明らかにした。12株のうち1株はkexF遺伝子の発現上昇株(変異株Nov2-2)であり、1株ではkexA遺伝子の発現上昇が認められた(変異株Oxa128)。また2株ではkexGの発現上昇が認められ、残りの8株ではkexDの発現上昇が認められた。変異株Nov2-2ではkexEの一部を含む約1.5kbpの領域が欠損していること、kexGあるいはkexDの発現上昇株では、これらの遺伝子の周辺領域に変異が発生していないことを明らかにした。そこで、各変異株における変異部位(変異遺伝子)の同定を目指した。変異株Oxa128では、kexA遺伝子の上流域に点変異が存在していることを新たに明らかにした。この変異型の制御領域を持つプラスミドを肺炎桿菌ATCC10031に導入した時、ゲノム由来のkexAの発現上昇が起こった。従って、この変異はkexAの発現上昇と関係していることが示唆された。kexD発現上昇株とkexG発現上昇株については、次世代シーケンサーを利用して変異部位の同定を試みた。kexG発現上昇株において、推定の発現制御遺伝子の変異を見出した。従って、kexG発現上昇株では今後この遺伝子を中心に詳細な解析を行う。kexD発現上昇株においては、これまでに変異がある可能性が高い4つの遺伝子について、サンガー法でシーケンスの確認を行ったが、実際には変異は存在しなかった。今後、残りの候補遺伝子について、変異の有無を確認する必要がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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