研究課題/領域番号 |
22590069
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤本 康之 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (60317724)
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キーワード | 受容体 / 蛍光 / 脂肪滴 |
研究概要 |
脂肪組織では、脂肪細胞に存在するアドレナリンβ3受容体を介してアドレナリン刺激に反応し、脂肪細胞に貯蔵された中性脂質分子の分解が促進されることが知られている。脂肪細胞における中性脂質貯蔵オルガネラは脂肪滴と呼ばれ、その表面にはperilipinと称する蛋白質が存在する。脂肪細胞がアドレナリン刺激を受けるとperilipin蛋白質はリン酸化され、脂肪滴表面から離脱する。本研究では蛍光標識perilipin蛋白質の細胞内動態観察によって、生細胞におけるアドレナリン刺激受容を可視的に検出する系の開発を試みる。さらに、この系を活用することでアドレナリンβ3受容体作働薬の探索を目指す。β3受容体作働薬は肥満等の生活習慣病の解消に役立つことが期待される。 昨年度は、アドレナリンβ3受容体を安定的に発現する哺乳類培養細胞の作成に取り組んだ。その結果、発現用ベクターの構築と哺乳類細胞での一過的な発現には成功したものの、安定発現細胞株の樹立には至らなかった。遺伝子導入後の細胞毒性等が原因と考えられた。 今年度は、アドレナリンβ3受容体に融合させるべき蛍光蛋白質の種類を変更し、新たに発現用ベクターを構築し直して、再度哺乳類細胞への遺伝子導入を行った。その結果、アドレナリンβ3受容体-蛍光蛋白質の融合体を安定的に発現する細胞株の樹立に成功し、細胞表面に蛍光蛋白質由来の蛍光が観察された。今後は、この細胞にperilipin遺伝子を導入することで、両遺伝子を安定的に共発現する細胞株の樹立をめざす。目的とする細胞株が樹立できた場合、アドレナリン受容体の各種リガンド(アゴニスト、アンタゴニスト等)を投与した場合に、β3受容体蛋白質およびperilipin蛋白質が生理的な応答をし得るかを確認する。 これらに加え、βArrestin発現用plasmidの構築と哺乳類細胞での一過的な発現も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アドレナリンβ3受容体-蛍光蛋白質の融合体発現plasmidの構築および遺伝子導入までは順調に進行したものの、細胞毒性等によって安定発現株の樹立には困難が伴われた。しかし、蛍光蛋白質の種類の変更によってこの問題点は克服され、安定発現株の樹立にも成功した。また、発現株の樹立と平行して、βArrestin発現plasmidの構築と一過的発現にも成功しており、今後アドレナリンβ3受容体安定発現株への導入と安定共発現株の樹立も計画している。この後者の実験系については、当初に予定していた研究計画の範囲を越えた進展を得られているといえる。以上のように、研究全体を総合的に捉えると一定の成果を得られていることから、研究の達成度はおおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の主要な推進方策として、アドレナリンβ3受容体-蛍光蛋白質融合体安定発細胞株にperilipin遺伝子を導入し、両遺伝子の安定共発現株の樹立をめざす。樹立後、各種アドレナリン受容体作働薬投与による生理作用を調べる。また、アドレナリンβ3受容体-蛍光蛋白質融合体安定発株にβArrestinを導入した共発現細胞株の樹立も試みる。βArrestinはG蛋白質共役型受容体の作用に基づいた細胞内動態を示す蛋白質であり、アドレナリン受容体応答の検出に有効と考えられる。
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