研究概要 |
α1,6フコース転移酵素Fut8は全身の組織で発現しているが、特に脳で高発現している。脳神経系におけるα1,6フコース構造の役割を明らかにするために行った行動試験の解析から、Fut8欠損マウスはヒトで幻覚・幻聴・妄想に相当する行動の増加、短期記憶の低下、コミュニケーション力の低下、脳の情報処理に障害が認められることを見出した。さらに、これらの現象は代表的な精神疾患であるが、その発症メカニズムが未解明な統合失調症患者に見られる症状・特徴と類似していることから、病態に深く関与すると考えられている脳内モノアミンの代謝回転を検証したところ、そのバランスが崩れていることがわかった。この崩れた脳内モノアミンのバランスは、統合失調症治療薬haloperidolの投与により修復され、統合失調症様行動も改善された。以上の結果からα1,6フコースが、統合失調症の発症に関わっていることを強く示唆することを明らかにした。 その成果はJ Biol Chemに「Alpha 1,6-fucosyltransferase-deficient mice exhibit multiple behavioral abnormalities associated with aschizophrenia-like phenotype:importance of the balance between the dopamine and serotonin systems」として、報告した。
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