研究課題/領域番号 |
22590074
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 典子 星薬科大学, 薬学部, 教授 (50277696)
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研究分担者 |
高橋 勝彦 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (80307066)
今井 正彦 星薬科大学, 薬学部, 助教 (40507670)
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キーワード | シグナル伝達 / 発現制御 / レチノイン酸 / 蛋白質修飾 / プロテインキナーゼA / レチノイル化 |
研究概要 |
生体に重要な作用を現すレチノイン酸(RA)の核内受容体とは別の作用機構として、レチノイル化(RAによる翻訳後蛋白質修飾)が知られている。本研究では、この新しい機構を詳細に解明するため、新規RA結合標的蛋白質を明らかにして、新しいシグナル伝達機構を見出すことを目的としている。前骨髄性白血病細胞HL60のプロテインキナーゼA(PKA)がレチノイル化され核内に移行していることから、核内レチノイル化PKAによる核内蛋白質のリン酸化を調べたところ、RA処理により新たに出現する、或いは増加するPKA依存的な核内リン酸化蛋白質を見出した。これら蛋白質を含むゲルを、二次元ポリアクリルアミドゲルから切り取り、蛋白質を抽出後、LC-MSMS解析、或いはOrbitrap質量分析解析を行った。その結果、No.1蛋白質はElongation factor1-alpha1(P68104),Cytochrome P450(P15538),COP9 signalosome complex subunit1,Voltage-gated potassium channel subunit beta-1、No.23蛋白質はTubulin alpha-1C chain、Cathepsin Dである可能性が示され、No.3とNo.5の蛋白質はKeratin,type I cytoskeletal 9、No.22蛋白質はN-terminal acetyltransferase complex ARD1 subunit homolog A、No.27蛋白質はProtein disulfide-isomerase A6と同定することができた。これらの蛋白質とRAにより誘導される細胞分化との関連性の解明を現在行っている。また、核内蛋白質であるヒストンのリン酸化へのRAの影響を、PKA基質抗体を用いて検討したところ、ヒストンはPKAによりリン酸化され、RA処理によりリン酸化及びアセチル化ヒストン量が変動することが明らかとなった。以上のことから、レチノイル化PKAはヒストンのリン酸化、アセチル化に影響を与えることにより、遺伝子の発現調節を制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ研究はほぼ計画通りに、順調に推移している。蛋白質の同定に多大な労力と時間を要することが判明したが、着実に実験を遂行して、確実な結果を出していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、未だ同定されていない核内PKA-リン酸化蛋白質、及び、核内レチノイル化蛋白質を同定していく。また、各種ヒストン(H4,H3,H2A,H2B)のPKAによるリン酸化について詳細に調べ、ヒストンにおける3種の蛋白質修飾(リン酸化、アセチル化、レチノイル化)の関連性の解明する。さらに、修飾核内蛋白質による転写調節機構の解明、及びこれに関与する制御因子の探索を行なう。
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