高齢者難治性喘息では、気道上皮細胞の障害およびリモデリングが惹起され、吸入ステロイド薬が効果を示しにくい病態が形成sあれる。気道上皮細胞の修復・恒常性維持の観点から、内因性コリン作動性蛋白質(SLURP1)およびそのα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7AChR)を介する刺激について役割の検討を進めた。SLURP1のiSRNAを培養ヒト気道上皮細胞に作用させると、TLR3リガンドを介するIL-6産生が増強した。一方、α7AChRを介する反応をiSRNAを用いて阻害することによっても、同様にサイトカイン産生が抑制された。このことから、内因性にSLURP1が産生され、気道上皮細胞の炎症を抑制的に働いていることが示唆された。リコンコンビナントSLURP1(rSLRUP1)を培養気道上皮細胞に投与するとサイトカイン産生を抑制し、また喘息モデル動物に経気道的に作用させることによっても気道炎症が抑制され、rSLRUP1が喘息反応制御能を示すことが明らかになった。また、マウス線毛上皮細胞を用いた検討で、α7AChRを介する刺激(MLA投与)は線毛運動を活性化する方向に働くことも明らかになった。rSLURP1も線毛運動促進作用を示し、α7AChRノックアウトマウスでは認められず、SLURP1の線毛運動促進作用がα7ニコチン受容体を介する反応であることが明らかになった。以上より、SLURP1は、α7AChRα7を介する作用で、炎症の抑制および気道上皮線毛運動の活性化に働き、恒常性維持に関与する。実際に高齢者喘息でSLURP1の分泌がどのような状態にあるか検討を開始し、今後、ヒトの病態での役割を明らかにしていく予定である。
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