研究課題/領域番号 |
22590077
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
赤木 玲子 安田女子大学, 薬学部, 教授 (50150967)
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研究分担者 |
井上 幸江 安田女子大学, 薬学部, 教授 (60159978)
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キーワード | ストレス応答 / 熱ショック転写因子 / グルタミン / HSP70 / ヘムオキシゲナーゼ |
研究概要 |
Caco-2細胞に熱ショックを負荷すると、温度依存性に熱ショック転写因子(HSF1)のリン酸化に続く熱ショックタンパク質(HSP)70、ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1の誘導が認められた。Caco-2細胞培養液にEtOHを添加すると、濃度依存的にHSF1のリン酸化、HSP70、HO-1の誘導とともにバリア機能の低下が観察された。グルタミン(Gln)を培地中へ添加すると、EtOH添加によるバリア機能障害の回復が促進され、その際、HSF1のリン酸化とHSP70の誘導を促進し、核内のHSF1も増加した。消化管保護効果が知られているGlnは熱ショックやEtOH添加によるHSP70、HO-1誘導効果を促進したことから、HSF1のリン酸化促進を介して細胞保護的に作用する可能性が考えられる。 次に、HSFI欠損MEFを用いて、ストレスタンパク質でもあるヘミン添加によるHO4誘導について検討したところ、HSF1欠損MEFの方が野生型MEFに比べ有意に高かった。次に、温熱処理後にヘミンを添加したところ、野生型MEFとは異なり、HSF1欠損細胞では温熱処理によりHO-1の誘導が著明に抑制された。cDNAマイクロアレイ解析の結果、温熱処理したMEFでは抑制系転写因子であるsmall Mafの誘導が認められた。以上の結果から、HO-1転写調節領域のうち、ストレス応答性のMaf Recognition Element(MARE)近傍を介するヘミンによる誘導はHSF1により抑制されていることが示唆された。一方、温熱処理によってsmall Mafが誘導され、MARE配列を介するHO-1の転写活性化は抑制されるが、その際同時に活性化されるHSF1はsmall Mafと相互作用することにより転写抑制を抑制し、生体防御におけるHO-1の転写を絶妙に制御している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Caco-2細胞における種々なストレス負荷によるストレス関連因子の変動を検討する過程で、HSF1がHSEを介してHSP70等を誘導するのみならず、MARE配列結合型転写因子群と相互作用することにより複雑な発現制御に関与することを見出した。本研究目的の一つであるところの、消化管における熱ショック応答の詳細を明らかにする上で大きな前進となっていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究助成を受けた過去2年間で、グルタミンによる消化管保護効果が、障害時のHSF1活性化を介するHSP70誘導を促進するメカニズムを明らかにした。その際高誘導されたHSP70は、消化管粘膜のバリア機能を保護することを証明した。さらにcDNAマイクロアレイ解析により熱ショックによりsmall Mafが誘導されること、同時に活性化されるHSF1はsmall Mafと相互作用することにより、HSP群を絶妙に発現制御している可能性が示唆された。以上の研究成果を踏まえ、今後はHSP70、HO-1等の発現制御メカニズムを分子レベルで詳細に追究したいと考えている。
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