研究課題
本年度は、神経系前駆細胞のモデル細胞であるレチノイン酸による分化誘導後のP19およびマウス大脳皮質由来培養神経系前駆細胞(mNPC)におけるOCTN1をはじめとする種々のSLCトランスポーターの発現を明らかとし、発現の明らかとなったトランスポーターの生理的役割を検討することにした。P19およびmNPCにおける種々の有機カチオントランスポーターの発現を定量PCRによって確認したところ、OCTN1~3、OCT1~3のいずれも発現していることが確認された。研究代表者が着目するOCTN1の発現が確認されたことから、機能的発現および生理的役割の解析については、まずOCTN1に関して行うことにした。放射標識されたOCTN1の特異的基質の取り込み活性測定により、P19およびmNPCにOCTN1が機能的に発現していることが明らかとなった。そこで次に、P19に発現しているOCTN1をsiRNAによってノックダウンし、細胞の増殖性を検討した。その結果、OCTN1の発現を抑制したP19では、細胞塊の形成が促進されることが明らかとなった。一方、OCTN1をはじめとする有機カチオントランスポーターを阻害することが知られているtetraethylammonium(TEA)をmNPCの培養メディウム中に添加したところ、細胞塊の形成は抑制され、さらに神経細胞への分化も抑制された。以上の結果より、神経系前駆細胞にOCTN1が機能的に発現しており、増殖能および神経細胞への分化能を調節していることが明らかとなったが、モデル細胞であるP19における遺伝子発現抑制とmNPCにおける阻害剤の添加で整合性のある結果は得られなかった。そこで、神経系前駆細胞に発現しているOCTN1の生理的役割をさらに明確にするため、来年度はoctn1遺伝子欠損マウスから神経系前駆細胞を調製し、さらなる検討を加える。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、マウス大脳皮質由来培養神経系前駆細胞(mNPC)におけるSLCトランスポーターの発現を明らかとし、発現の明らかとなったトランスポーターの生理的役割を検討することを目的として行った。その結果、mNPCにおけるOCTN1の機能的発現を明らかとし、増殖および分化能を制御している可能性を示すことができたため、本年度の研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
本年度の研究成果により、マウス大脳皮質由来培養神経系前駆細胞(mNPC)にOCTN1が機能的に発現しており、増殖および分化能を制御している可能性が示された。そこで、来年度は神経系前駆細胞に発現しているOCTN1の生理的役割をより明確にするため、野生型マウスおよびoctn1遺伝子欠損マウスから神経系前駆細胞を調製し、増殖能および分化能にどのような違いが現れるのかについて検討する。さらに、in vitro培養実験系で得られた知見がどの程度in vivo行動実験系に帰納できるのかを検討するため、野生型マウスおよびoctn1遺伝子欠損マウス間における行動学的変化についても検討を加える。
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Neurochemistry International
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http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~bunyaku/