研究課題/領域番号 |
22590089
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
阿部 和穂 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (60202660)
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キーワード | アルツハイマー病 / 海馬 / 神経幹細胞 / 神経新生 / 扁桃体 |
研究概要 |
海馬が変性脱落して記憶障害が起こるアルツハイマー型認知症を本質的に治療するには、海馬を元に戻す技術が必要になる。近年、大人の海馬にも神経幹細胞が存在し絶えず神経細胞が新生されていることが発見され、この仕組みをうまく制御できれば、萎縮した海馬を部分的にでも元に戻すことは可能と期待されている。また、豊かな環境で育った動物では海馬の神経新生が活発になる一方で、過度の刺激はストレスを生じ海馬神経新生を阻害すると報告されている。同じ環境刺激でも「快」と判断されたときと「不快」と判断されたときでは海馬新生に対する影響が違うと考えられる。脳の中で感覚情報の価値判断を行うのは「扁桃体」であることから、本研究では「扁桃体が海馬の神経新生を左右する」という仮説をたて、その実証を試みるとともに、そのメカニズム解明と認知症治療への応用を検討することとした。 2年目にあたる平成23年度は、まずin vivoにおける海馬の神経新生について「増殖」と「分化」を区別して定量解析する手法を確立した。具体的にはマウスまたはラットにブロムデオキシウリジン(BrdU)を注射で連投し、24時間後あるいは28日後に灌流固定して脳切片を作成し、抗BrdU抗体と神経細胞のマーカーであるNeuNに対する抗体を用いた免疫染色により増殖細胞および分化した新生細胞数を定量することができた。扁桃体の関与を明らかにするため、海馬采あるいは扁桃体を破壊した影響を調べている。また、ラット胎児海馬の細胞を分離培養して作成されたneurosphereより神経幹細胞を継代培養し、神経幹細胞の増殖におよぼすいくつかの化合物群の効果を検討したところ、フィセチンをはじめとするフラボノイド群に有効性を認めた。化学構造を変えた誘導体をテストすることで、より効果的に海馬神経新生を促進する化合物を発見したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた生体での海馬神経新生を定量解析する手法は確立できた。また培養系の実験で、海馬神経新生を促進できると思われる新化合物を見出すことができた。これらの成果を統合して計画を進めれば、順調に進展すると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているので、当初計画どおりに進めることが第一である。ただし、生体での海馬神経新生の定量解析には時間がかかるので、多群間での相違を調べるのは困難かもしれない。検討課題を絞り込むことによって効率的な解決を図りたい。
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