研究課題
本年度は、血管でのアンジオテンシンタイプ2受容体(AT2受容体)刺激は細胞内酸性化を誘導するか、細胞内酸性化は血管弛緩反応を起こすかについて検討することであった。まず、組織酸性化による血管弛緩応答について検討したところ、HEPES緩衝化Krebs溶液により、pH7.4-6.4の範囲でpHの低下に依存した血管弛緩反応が認められた。この弛緩反応の約50%はNO合成酵素阻害薬L-NAMEや血管内皮除去により抑制された。pH低下による内皮依存性弛緩反応はカルモジュリン阻害薬カルミダゾリウムにより抑制され、またウシ血管内皮細胞をpH6.6の培養液に暴露すると30秒以内をピークとする一過性の細胞内Ca^<++>応答が見られたことより、pH低下による内皮依存性弛緩反応は、Ca^<++>依存性内皮型NO合成酵素活性化に基づくと考察された。また、酸性pHでの血管弛緩応答は、内皮除去血管でも観察され、この応答は、電位依存性Kチャネル阻害薬4-アミノピリジンにより完全に抑制された。さらに、ジメチルアミロライド添加による細胞内酸性化することにおいても血管弛緩反応が認められ、この弛緩反応は内皮除去やL-NAME、カルミダゾリウムによって完全に抑制されたことから、酸性pH暴露とは異なり、内皮のみに依存した反応であると考えられた。次に、アンジオテンシンIIによるAT2受容体刺激が、血管内酸性化を誘導するかについてラット血管平滑筋細胞を用いて検討した。その結果、アンジオテンシンIIによりAT2受容体刺激すると、刺激したアンジオテンシンIIの濃度に依存した細胞内の酸性化が観察された。現在、この酸性化にナトリウム-プロトン輸送体が関与ししているかについて検討中である。
2: おおむね順調に進展している
アンジオテンシンIIによる組織酸性化機構の解明が、計画よりやや遅れている。その他については、おおむね計画通り研究を遂行しており、現在、得られた研究成果を公表すべく研究論文作成中である。
これまで研究がおおむね順調に進んできたことから、現研究体制で研究を継続する予定であるが、細胞内酸性化の測定など、研究の一部は、大学共用機器を使用しており、使用できる時間に制約があるため研究の進展に遅延が生じている。本研究室が使用できる時間を有効に利用し研究を進めていく。
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巻: 118(1) ページ: 197
巻: 118(1) ページ: 86
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